ポルシェ911とケイマン、それぞれがポルシェにとって人気があり、もはやなくてはならない重要なモデルです。クルマ好きからすれば、ポルシェ911とケイマンの違いは一目瞭然でしょう。
しかし、最近、クルマに興味を持ちはじめた方にとっては、それぞれの違いや、メーカーのおける立ち位置が分かりにくいことも事実です。ポルシェ911とケイマンは何が違うのか?迷ったときにどちらを選べばいいのか?今回はポルシェ911とケイマンの違いをまとめてみました。
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ポルシェ911とケイマンのそれぞれの違いについて
ポルシェ911と718ケイマンの位置づけ
ポルシェのスポーツモデル、ひいては数あるポルシェの全ラインナップのなかでも代表的な存在が911です。1963年にポルシェ356の後を継いでデビューして以来、現行モデルで8台目となります。
その存在はポルシェにおける象徴であり、多くのユーザーにとって手に入れたい憧れのモデルとして君臨しています。対してケイマンは、2005年に初代モデルである987型がデビュー。現行モデルである982型を含めて3代目となります。
モデルライフとしては911が圧倒的に長寿であり、ケイマンは1996年に初代モデルがデビューしたボクスターの派生モデルという位置づけになります。1990年前後、ポルシェ社は深刻な販売不振に陥っており、その救世主としての一躍を担ったのが初代ボクスターでした。
このモデルのヒットがあったからこそ、ケイマンも誕生することができたのです。
ポルシェ911と718ケイマン、両モデルの主な違いについて
911とケイマンの決定的に異なる点は「エンジンレイアウト」「駆動方式」「リアシートの有無」「リアサスペンションの形式」、そして「メーターの数」ですが、ここでは「メーターの数」について触れておきましょう。
911はタコメーターを中心に据えた伝統の5連メーター、そしてケイマンは3連メーターです。興味がない方にとっては大きな差とは感じないかもしれません。
しかし、ケイマンがどれほど高性能で、どれほど人気モデルであったとしても、5連メーターに変わることは半永久的にないと考えていいでしょう。ポルシェにとっては911の方が名実ともにケイマンより上位であり、これは絶対なのです。
911と718ケイマンの外観上の特徴との違い
誰が見てもひと目で「911」とわかるエクステリアデザイン。この変わることのない(同時に変えることを許されない)フォルムを半世紀以上にわたって維持しています。
そして現行モデルである992型では、曲線や直線をよりシンプルに表現するいっぽうで、ワイドボディをより力強い造形で包み込むことにより、先代モデルである991型よりも存在感のあるスタイリングとなっています。
一方でケイマンは、フロントとサイドのエアインテーク、そしてサイドプロフィールがスポーツカーらしいシャープな造型を表現しています。
なかでもシャープな形状のフロントノーズは、見る人に力強い印象を与えます。さらに、パーキングライトとインジケーターライトを含むサイドエアインテーク上の細長いフロントライトがこの力強さを強調するのに一役買っています。
それぞれの見分け方は?
911とケイマンの見分け方。非常にシンプルにまとめると「ヘッドライトが丸目なのが911、三角形のヘッドライトがケイマン」と覚えれば見分けがつきやすいでしょう。
また、左右ドアの後ろにエアダクト(空気孔)の有無も識別ポイントのひとつです。このダクトがある方がケイマンになります。フォルクスワーゲンビートルを思わせるような、かぶと虫のようなシルエットを持つクルマが911…といった見方もできそうです。
ボディサイズと全長の差異
ではここで、911とケイマンのボディサイズおよびホイールベースの違いを数値で比較してみましょう。
- 全長×全幅×全高=4519×1852×1300mm
- ホイールベース=2450mm
- 全長×全幅×全高=4379×1801×1295mm
- ホイールベース=2475mm
こうして並べてみると、911の方がひとまわり大きなボディであることが分かります。と同時に、ホイールベースはケイマンの方が長いことに気づきます。
不特定多数のドライバーが運転する市販車だけに、ホイールを長くすることで、少しでも安定した挙動を実現したいと考えるポルシェの思惑が見え隠れします。
ポルシェ911、718ケイマンのエンジンとパワートレーンの違い
911の水平対向6気筒エンジンの特性
ポルシェ911に搭載される水平対向6気筒エンジン。このレイアウトを採用した利点として、エンジン本体の全高が非常に低く、軽量でコンパクトが挙げられます。
また、非常にスムーズに回転し、慣性モーメントや慣性力を感じさせません。さらに、車両の低重心化にも適しています。水平なシリンダーレイアウトにより、車両の姿勢を非常に低く抑えることができるだけでなく、車両の重心が下がるほど、よりスポーティな走りが可能になるのです。
また、水平対向6気筒エンジンが持つもうひとつの重要な特徴として、発生する出力に比べて燃料消費量が少ないことも特性のひとつといえるでしょう。
718ケイマンの新世代エンジンの特性
718ケイマンに搭載される4気筒水平対向ターボエンジンは、718ボクスターと共通のものです。ベーシックモデルである718ケイマンには最高出力300psの2Lエンジンが、上位モデルの718ケイマンSには350psを発生する2.5Lエンジンが搭載されます。
これは先代モデルに対してそれぞれ25ps増加し、新欧州サイクル(NEDC)による燃費は8.1リッター/100kmから5.7リッター/100kmとなります。
2Lエンジンは先代モデル比で90Nmアップの380Nmを1,950rpmから4,500rpmの間で発生。市販のガソリンエンジン車では911ターボのみに採用されているバリアブルタービンジオメトリー(VTG)を備えた2.5Lターボエンジンは、先代モデル比50Nmアップの420Nmを1,900rpmから4,500rpmで発生します。
ポルシェ911と718ケイマンのエンジン搭載位置の違い
911のエンジン搭載位置
911は相対的にリアが重い分、フロントが軽い。この独特の挙動が長年に渡り「乗り手を選ぶクルマ」といわれてきた所以です。
しかし、ボディが大型化され、4WDモデルが追加されるなど、このウィークポイントを解消しようと腐心してきた結果、以前ほどにはシビアなクルマではなくなってきたことも事実です。
718ケイマンのエンジン搭載位置
ミッドシップレイアウトを採用しているケイマンは、運動性能に優れている反面、リアシートを設置できません(その部分にエンジンが置かれるため)。またクルマの設計次第ではコーナリング時に、運転操作を誤るとスピンする可能性があるなど、一定のドライビングテクニックが求められるクルマでもあるのです。なお、余談ですが、両車ともに後輪駆動なのは共通です。
ポルシェ911と718ケイマンのエンジンレイアウトの違い
911のリアエンジンレイアウトの特性
対して911はリアに水平対向エンジンを搭載することで、低重心かつFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車では味わえない、背後から押されるような、独特の加速が味わえます。
さらに決して広いとはいえませんが、リアシートがあることで、大人2人と荷物を積んで旅行に出掛けることもできるのです。つまり、ポルシェ911はスポーツカーであり、実用性も兼ね備えたグランドツーリング(GT)カーとしての役割も兼ね備えているのです。
718ケイマンのミッドシップレイアウトの特性
911は伝統的に水平対向6気筒エンジンをリアに搭載しています。対してボクスターはミッドシップ。つまり、ボディのほぼ中央にエンジンが搭載されています。
このエンジンレイアウトの違いがもたらす走りの違いは歴然です。多くのレーシングカーやスーパースポーツモデルがミッドシップレイアウトを採用しているように、コーナリングスピードの速さや回頭性など、クルマそのものの高い運動性能が得られます。
ポルシェ911と718ケイマンのサスペンションの違い
現行モデル911(992型)のサスペンション形式は、フロントがマクファーソンストラット式、リアマルチリンク式。ちなみにGT3/GT3RSではフロントがダブルウイッシュボーン式に変更されています。そしてケイマンはフロント・リアともにマクファーソンストラット式です。
911およびケイマンともに、公道で限界走行を試すのは不可能に近いくらい安定しています。
どうしても限界域を試してみたいというのであれば、サーキットや、千葉県木更津市にある「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(通称PEC東京)」で思う存分、かつ安全に限界の挙動を体験することを強くおすすめします。
ポルシェ911と718ケイマンの重量バランスと旋回性能の違い
前後重量配分は911は33:67(モデルによって多少の差がある)であるのに対して、ケイマンが44:56(モデルによって多少の差がある)です。
いずれもリアヘビーではありますが、旋回性能においてはケイマンに分があります。まさにオン・ザ・レール感覚でスムーズにコーナリングしていくケイマンを選ぶか、よりテールヘビーながらリアから押されるような強力なトラクションを堪能するか?このあたりは好みによるといえるでしょう。
ポルシェ911と718ケイマンの走行フィーリングの違い
サーキット走行における両モデルの性能差
エンジンは伝統の水平対向6気筒+ツインターボ。最高出力450psと最大トルク530Nmを発生します。これは先代比でそれぞれ+30psと+30Nmの向上となります。
例を挙げると、カレラSでは0-100km/h加速が3.7秒、最高速が308km/hというパフォーマンスを発揮します。
オプションのスポーツクロノパッケージを装着したPDK仕様の718ケイマンによる0-100km/h加速タイムは4.7秒で、同仕様のケイマンSでは4.2秒となります。最高速度は718ケイマンで275km/h、718ケイマンSでは 285km/hに達します。
一般道での走行フィーリングと使い勝手
911とケイマン、一般道での走行フィーリングの違いを挙げてみましょう。911の方がどっしりとした安定感があり、また乗り心地もスポーティな高級車のように快適です。
初めて乗る人にとっては、911が想像以上に快適なクルマだと知り、衝撃を受けるかもしれません。
対してケイマンは911よりも軽快でキビキビしています。スポーツカーらしさ、そして若々しさを感じるのはケイマンの方だといえます。
次に私生活における使い勝手ですが、リアシートを装備する911の方が良いといえます。フロントフード内の収納スペース、そしてリアシートを倒してラゲッジスペースにすれば、IKEAなどである程度大きな家具を購入したり、ゴルフバッグを積んでゴルフエクスプレスとしても活躍してくれるでしょう。
反面、ケイマンは2シーターということで、911と比べて室内の圧迫感や狭さ、そしてラゲッジスペースの少なさは致し方ないところです。
ポルシェ911と718ケイマンの価格の違い
911と718ケイマンの新車価格の差
ここで911とケイマンの新車時の価格を比べてみましょう。エントリーモデルで比較すると、911はケイマンのほぼ倍となります。ボリュームゾーンは911が2000万円前後、ケイマンが1000万円前後と、ほぼ倍の開きがあります。
かといって、性能面でケイマンが決定的に劣っているかというとそうではないことも事実。「911というブランド」に固執しなければ、ケイマンも充分すぎるほどに魅力的なスポーツカーといえるでしょう。
911(992型)の価格(2024年4月現在)
モデル | 価格 |
---|---|
911カレラ | ¥16,200,000 |
911カレラT | ¥17,570,000 |
911カレラカブリオレ | ¥18,450,000 |
911カレラ4 | ¥17,260,000 |
911カレラ4カブリオレ | ¥19,510,000 |
911カレラS | ¥19,510,000 |
911カレラSカブリオレ | ¥21,760,000 |
911カレラ4S | ¥20,570,000 |
911カレラ4Sカブリオレ | ¥22,820,000 |
911タルガ4 | ¥19,510,000 |
911タルガ4S | ¥22,820,000 |
911カレラGTS | ¥20,590,000 |
911カレラGTSカブリオレ | ¥22,840,000 |
911カレラ4 GTS | ¥21,650,000 |
911カレラ4 GTSカブリオレ | ¥23,900,000 |
911タルガ4 GTS | ¥23,900,000 |
911エディション50Years ポルシェデザイン | ¥27,000,000 |
911ダカール | ¥30,990,000 |
911S/T | ¥41,180,000 |
911GT3 | ¥26,280,000 |
911GT3ツーリングパッケージ | ¥26,280,000 |
911GT3 RS | ¥33,780,000 |
911ターボ | ¥28,320,000 |
911ターボカブリオレ | ¥31,200,000 |
911ターボS | ¥32,790,000 |
911ターボS カブリオレ | ¥35,670,000 |
718(982型)の価格(2024年4月現在)
モデル | 価格 (6MT) | 価格 (PDK) |
---|---|---|
718ケイマン | ¥8,400,000 | ¥8,832,000 |
718ケイマン スタイルエディション | ¥9,520,000 | ¥9,944,000 |
718ケイマンT | ¥8,420,000 | ¥8,972,000 |
718ケイマンS | ¥10,390,000 | ¥10,822,000 |
718ケイマンGTS 4.0 | ¥12,240,000 | ¥12,736,000 |
718ケイマンGT4 | ¥12,370,000 | – |
718ケイマンGT4 RS | – | ¥20,240,000 |
※価格はいずれも消費税込み
※一部のモデルは受注を停止しているものもあります。
911と718ケイマンの中古車市場での価格の差
では、911とケイマン(それぞれ現行モデル)の中古車市場での価格動向と需要を見てみましょう。
- 平均価格:2407.4万円
- 価格帯:1234.5万円~6820万円
- 平均価格:1095.1万円
- 価格帯:444.5万円~3500万円
新車以上に価格差があることが分かります。モデルチェンジを繰り返すごとに車両本体価格が上昇している911およびケイマンだけに、「新車は買えないけれど中古車なら手が届く」あるいは「新車をオーダーしても納車まで数年掛かるから待ちきれない」といった理由で中古車(あるいは新古車)を選ぶ方が少なくありません。
よって中古車相場は高値安定。また、純内燃機関を搭載したポルシェに乗れるのは最後かもしれないという市場の危機感もあり、当面は高値の相場が続くと見ています。
それぞれどんな方におすすめか?
911はどういう方が購入するのか?
「ポルシェ=911」の志向が強く、長年の憧れの対象であり、どうせポルシェを手に入れるのであれば911を選びたいという指名買いが圧倒的に多いモデルです。
ブランドとしてのチョイス、そして憧れの対象としてのチョイス。いずれにせよ「ポルシェ=911」という揺るぎない価値観を持った方が911を選ぶ傾向があるかと思います。
また911はスポーツカーと定義してドライブする楽しみ方の他、旅行やゴルフ、または冠婚葬祭といったフォーマルな場に乗っていくこともできる(ボディカラーにもよりますが)、GTカー、そしてオールラウンダーとして用途を兼ね備えているのが911です。
ケイマンはどういう方が購入するのか?
これまで国産車や他ブランドのスポーツカーを乗り継ぎ、ケイマンでポルシェデビューを果たしたというケースも多いようです。また、GTカー的な要素もある911ではなく、生粋のハンドリングマシン、そしてスポーツカー像を追い求めて敢えてケイマンを選ぶ方もいます。
また、ケイマンは街乗りも難なくこなしてくれますが、あくまでもスポーツドライビングを楽しむためのクルマ。ご自身がどのようなシーンでポルシェの世界を楽しみたいか。そして単刀直入にいってほしいモデルはどちらなのか。ご自身の気持ちに正直になり、これしかない!というポルシェを選び出してみてください。
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