アウディTTは、流麗なデザインとスポーティな走行性能を兼ね備えたプレミアムクーペとして長年にわたり人気を博してきました。1998年の初代モデル登場以来、そのスタイリングやパフォーマンスの進化を重ね、多くのファンに愛されてきました。
しかし、2023年の生産終了をもって、アウディTTは新車としての販売が終了しました。現在、中古車市場ではその希少価値が高まりつつあります。
この記事では、アウディTTの歴史や魅力、維持費について詳しく解説していきます。
アウディTTの歴史

アウディTTが初めて姿を現したのは、1995年9月に開催されたIAA(フランクフルトモーターショー)でスタディモデルが発表されたときです。当時のデザイン部門責任者であったペーター・シュライヤーの指揮のもと、米国人デザイナーであるフリーマン・トーマスの手によって生み出されました。
そして1998年に「アウディTTクーペ」の生産が開始され、翌年にはオープンモデル「アウディTTロードスター」が導入されました。アウディTT(初代/8N)には、最高出力150~225psを発生する直列4気筒ターボエンジンに加え、250psを発生するV6エンジンを搭載したモデルも用意されました。
こうして、2006年半ばまでの8年間に17万8,765台のアウディTT(初代/8N型)が生産され、1999年から2006年にかけて、計9万733台のアウディTTロードスターが生産されました。
その後、第2世代のアウディTTへフルモデルチェンジが行われました。2代目となるアウディTTは、「シンプルで本質的なデザインの追求」を基本的なデザイン要素として継承しています。
2006年にクーペがデビューし、翌2007年にロードスターが発売されました。アウディTT(2代目/A5)は、第2世代のアウディA3のプラットフォームをベースに開発され「アウディマグネティックライド」を備えたアダプティブダンパーが初めて採用されたモデルです。
アウディマグネティックライドは、ショックアブソーバーを路面状況やドライバーの運転スタイルに応じて連続的に可変する機構を備えています。2008年には、272psを発生するスポーツモデル「アウディTTS」が発売されました。
翌2009年には、340psを発生する2.5リッター 5気筒ターボエンジンを搭載した「アウディTT RS」と、最高出力を360psにまで引き上げた「アウディTT RS プラス」が発売されました。また2008年には「アウディTT 2.0 TDIクワトロ」が発売されました。このモデルは世界初となるディーゼルエンジンを搭載した市販スポーツカーとして話題となりました(日本では未発売)。
第3世代であり最後のモデルとなるアウディTT(3代目/FV)は、2014年にフルモデルチェンジされました。2.0TFSIエンジンおよびMTを組み合わせたTTクーペの重量は1,230kgです。これは先代モデルよりも約50kg軽量化されています。また初代アウディTTの特徴的なフォルムはリファインされ、丸い燃料タンクキャップも世代を超えて受け継がれています。
一方、ボディには軽量かつ高剛性なアルミニウムとスチールの複合構造ASF(アウディスペースフレーム)が用いられたほか、従来のアナログメーターとMMIモニターに代わり、フルデジタルメーターとなる「アウディバーチャルコックピット」を初めて採用するなど、先進技術も積極的に導入されました。
2023年には、アウディTTの生産終了を記念した限定モデル「ファイナルエディション」が発売され、その歴史に幕を下ろしました。
アウディTT(FV)デビュー時のモデル概要

3代目のアウディTTがデビュー当時に日本市場に導入されたのは、2.0リッター直噴ガソリンエンジン(2.0 TFSI)を搭載したアウディTTクーペ、アウディTTロードスターおよびアウディTTSです。そのうち、アウディTTクーペにはFWDとフルタイム4WDシステムの2タイプを設定。
またアウディTTロードスターおよびアウディTTSはすべてクワトロ(フルタイム4WD)仕様となります。2.0TFSIエンジンの最高出力は230psで、TTSには286psの高性能バージョンが搭載されました。トランスミッションは全車6速Sトロニックを採用しました。
また、アルミを多用したコンポジット(複合)構造の軽量ボディの採用し、クラス初となるフルデジタル多機能メーター「アウディバーチャルコックピット」を全モデルに導入しました。さらに、マトリクスLEDヘッドライトをTTSに標準搭載し、TT各モデルにもオプション設定するなど、各所に先進技術が採用されました。
デザイン面では、アーチ型ルーフライン、丸く張り出したホイールアーチ、大型のアルミ調フィラーキャップ、インテリアの丸型エアベントなど、アウディTTとしてのアイデンティティを継承しています。
また、ボンネット上に移されたフォーシルバーリングスのエンブレムや6角のシングルフレームグリルなどにより、新時代のアウディスポーツカーであることをアピールしています。
主なスペック
エンジンは全グレードで、2.0 TFSI:ターボチャージャー付2.0リッター直列4気筒エンジンを搭載。従来型の2.0TFSIに対し、パワーとトルクが211ps/350N・mから230ps/370N・mに向上しているほか、燃費効率も13.0km/Lから14.7km/Lへと改善されています(アウディTT クーペ クワトロでの比較。JC08モード燃費)。
またアウディTTSには、出力/トルクを286ps/380N・mに高めたエンジンが搭載されています。
新車価格
※この価格は2025年3月時点のものです。
- 40TFSI:5,180,000円
- 45TFSIクワトロ:6,490,000円
これまで発売された限定車について
- 1.8TFSI 1stエディション:(2016年8月/限定180台):5,000,000円
- 1.8TFSI ライティングスタイルエディション(2017年7月/限定110台):5,290,000円
- Sラインダイナミックリミテッド(2018年5月/限定110台):5,500,000円
- 1.8TFSI スタイル+(2018年7月/限定100台):5,320,000円
- 2.0TFSI クワトロ スタイル+(2018年7月/限定100台):6,490,000円
- 20イヤーズ(2019年6月/限定20台):7,590,000円
- Sラインコンペティション(2020年6月/限定150台):6,890,000円
- Sラインコンペティションプラス(2022年5月/限定200台):7,710,000円
- ファイナルエディション(2023年5月/限定200台):7,930,000円
中古車相場
※この価格は2025年3月時点のものです(Webカーセンサー調べ)。
- 平均価格:336万円
- 価格帯:125.5万円~779.9万円
走行性能
アウディTTクワトロおよびTTSには、後輪への駆動力伝達に電子制御の多板クラッチを使った「クワトロフルタイム4輪駆動システム」が採用されています。通常の運転では駆動力はフロントタイヤにのみ伝達されますが、フロント/リアタイヤに速度差が生じる、また全開加速や高速コーナリングで高いトラクション能力が必要と判断されると、4輪に駆動トルクが分配される構造になっています。
さらに、ボタン操作で好みの走行モードを選べる「アウディドライブセレクト」を全モデルに搭載。走行モードは5種類設定されており、選択に応じてアクセルペダル、Sトロニック、クワトロフルタイム4輪駆動システム、オートエアコンなどの制御マッピングが自動調整されます。
これに加えて、LEDヘッドライトを全モデルに標準装備。さらに「マトリクスLEDヘッドライト」をアウディTTSに標準装備、TT各モデルにもオプション設定しています。このマトリクスLEDヘッドライトは、対向車や先行車両の存在を検知し、自動的にライトの部分的マスキングを行う構造になっています。
これにより、常時ハイビームで走ることができるため、夜間の視界が大幅に改善します。
内外装のデザイン、安全装備
3代目となるアウディTTの外観は、力強く張り出したホイールハウス、優美なルーフライン、大きなアルミ調フィラーキャップなどでアウディTTとしてのアイデンティティを示す一方、ボンネットに移されたフォーリングス、6つの角を持ったシングルフレームグリル、LEDのヘッドライトを採用することで、新たに生まれ変わったアウディTTであることをアピールしています。
また、全長4,180mmおよび全幅1,830mmのボディサイズは、先代モデルTTよりそれぞれ10mm小さくなる一方で、ホイールベースは40mm延長され2,505mmとなっています。その結果、前後オーバーハングが短くなり、伸びやかでダイナミックなプロポーションが実現しています。
内装についても、従来より直線基調のダッシュボードを採用しつつ、円形のエアコンの吹き出し口がTTらしさを強調しています。従来のメーターパネルが収まる場所には高解像の12.3インチデジタル液晶ディスプレイがレイアウトされています。
このディスプレイには、速度やエンジン回転数のメーター表示、ナビゲーション、インフォテイメントシステムの機能がすべて統合されています。その結果、従来のアナログ式メーターや独立したディスプレイと比較して、視認性や操作性が大幅に向上しています。
アルミを多用した先代アウディTTのコンセプトを引き継ぎつつ、さまざまな素材を計画的に組み合わせることで、軽量かつ高機能なボディを実現しています。また、フロア周りを強化スチールなどで構成しつつ、ボディフレーム上部とアウターパネルはすべてアルミ製とし、高い剛性、衝突安全性を確保しながら、ボディ重量を10kg単位で軽量化しています。
アウディTT(3代目)の仕様変更について
3代目となるアウディTTは、2019年4月24日に大幅な仕様変更を行っています。外観のデザインがよりスポーティな仕様にリファインされ、アウディTTクーペ 40 TFSIは、エンジンパワーの強化や装備の充実を図るなど、第3世代のアウディTTシリーズに大幅なアップデートが施されています。
日本市場に導入されたのは、アウディTTクーペ 40 TFSI とアウディTTクーペ、アウディTTロードスター、45 TFSI クワトロ、高性能バージョンのアウディTTS クーペの4モデルです。FFエントリーモデルであるアウディTTクーペ 40 TFSIの最高出力は、従来比+17ps/+70N・mの197ps/320N・mとなり、パフォーマンスを大幅に向上しました。
スタンダードモデルの外観は、従来のS Lineエクステリアのデザインを取り入れ、バンパー、サイドスカート、リアディフューザーのデザインを変更しています。また、シングルフレームグリルにはマットブラックペイントの立体的な3Dハニカムメッシュグリルを採用し、アウディR8のエッセンスを取り入れたスポーティなデザインとなっています。
アウディTTSクーペまたはオプションのS Lineパッケージ装着車は、バンパー・サイドスカート・リアディフューザーのデザインを一新。テールライト下にはエアアウトレットを模したデザインエレメントが追加されています。また、シングルフレームグリルはS Lineパッケージ装着車はグロスブラックペイントの立体的な3Dハニカムメッシュグリルに、アウディTT クーペは専用のアルミルックインサート付きマットブラックペイント仕様となっています。
内装は、従来のS Lineパッケージ装着車のみの設定だった「エクステンデッドアルミニウムルックインテリア(ウインドウスイッチ/ペダル)」を、オプションのスタイルパッケージ(40 TFSI)やコンフォートパッケージ(45 TFSI クワトロ)に新設定。
また、レザーパッケージにはドアアームレストやセンターコンソールも同色となるカラーエクステンデッドレザーを新たに採用しています(45 TFSI クワトロ/TTS クーペ)。S Lineパッケージ装着車では、シートをSスポーツシートに変更しています。表皮素材はアルカンターラとレザーの組み合わせで、ダイヤモンドステッチを配し、スポーティさとプレミアム感を大幅に高めています。
ライバル車比較

ここでは、アウディTTと競合する主要モデルのスペックを比較し、それぞれの特徴や強みを詳しく解説します。
- 全長×全幅×全高:4180×1830×1380mm
- ホイールベース:2505mm
- 車両重量:1270kg
- 駆動方式:FF
- トランスミッション:6速AT(6速Sトロニック)
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1798cc
- エンジン最高出力/最大トルク:180ps/250N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4180×1830×1380mm
- ホイールベース:2505mm
- 車両重量:1370kg
- 駆動方式:フルタイム4WD
- トランスミッション:6速AT(6速Sトロニック)
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1984cc
- エンジン最高出力/最大トルク:230ps/370N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4190×1830×1380mm
- ホイールベース:2505mm
- 車両重量:1320kg
- 駆動方式:FF
- トランスミッション:7速AT(7速Sトロニック)
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1798cc
- エンジン最高出力/最大トルク:197ps/320N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4190×1830×1380mm
- ホイールベース:2505mm
- 車両重量:1420kg
- 駆動方式:フルタイム4WD
- トランスミッション:7速AT(7速Sトロニック)
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1984cc
- エンジン最高出力/最大トルク:230ps/370N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4440×1800×1410mm
- ホイールベース:2730mm
- 車両重量:1560kg
- 駆動方式:フルタイム4WD
- トランスミッション:7速AT
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1991cc
- エンジン最高出力/最大トルク:306ps/400N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4379×1801×1295mm
- ホイールベース:2475mm
- 車両重量:1440kg
- 駆動方式:MR
- トランスミッション:7速AT(7速PDK)
- エンジン:水平対向4気筒インタークーラーターボ
- 排気量:1988cc
- エンジン最高出力/最大トルク:300ps/380N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4355×1800×1465mm
- ホイールベース:2670mm
- 車両重量:1580kg
- 駆動方式:フルタイム4WD
- トランスミッション:8速AT
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1998cc
- エンジン最高出力/最大トルク:306ps/450N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4275×1800×1465mm
- ホイールベース:2630mm
- 車両重量:1510kg
- 駆動方式:フルタイム4WD
- トランスミッション:7速AT(7速DSG)
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1984cc
- エンジン最高出力/最大トルク:310ps/400N・m
- ステアリング:右
どのような方におすすめか?

すでに絶版モデルとなったアウディTT。新車で手に入れることはできませんが、今なら新車同様の中古車が市場に流通しています。2ドアクーペという趣味性の高いクルマゆえ、ファミリーカーとして使う人は少ないと考えられます。
つまり「アウディTTに憧れていて、いつか手に入れたいと思っていた方」や「以前、アウディTTに乗っていたが、もう一度手に入れたい方」と考えている方にこそおすすめしたいモデルです。
最終モデルである3代目アウディTTですら、デビューしたのは2014年でありすでに10年以上が経過しています。現代のクルマの基準からすれば、決して最新のスペックとはいえません。
しかし、必要十分なスペックを備えていることも事実です。サーキットでタイムアタックをするわけではない以上、最高速やエンジンパワーなどの性能をそこまで気にする必要はないと考えます。
それよりも、「アウディTTが好き!」または「アウディTTに憧れていた」といった自身の気持ちや願望を優先すべきだと考えます。なぜなら、これから先、確実にコンディションの良い個体が減っていくことは間違いないからです。「欲しい!」と思ったときがタイミングです。
アウディTT(FV)の購入を検討している方は、ぜひトップランクまでご相談ください。希少価値の高まるモデルだからこそ、信頼できるスタッフが納得のいく一台をご提案します。
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