メルセデスベンツにとっての”AMG”、アウディであれば”S”および”RS”、フォルクスワーゲンは”R”、レクサスであれば”F”など……。各ブランドには、通常のグレードとは別格の存在を示すモデルが存在します。BMWであれば、いうまでもなく”M”がそれにあたります。
一般的に、ノーマルのグレードよりもハイスペックであり、それに相応しい部品が厳選されている他、ボディカラーや各種装備、ボディの形状など、声高ではないものの「見る人が見れば分かる」通好みな仕立てになっていることもしばしばです。
スペシャルモデルゆえ、必然的に車両本体価格もノーマルモデルより高額であり、それに付随して車検や法定点検、各部品代なども割高になります。しかし、やりくり次第で維持費を抑えることも不可能ではないのです。
BMW Mシリーズは公道も走れる究極のレーシングスポーツカー
BMW Mシリーズとは、端的に表現するのであれば「公道も走れる究極のレーシングスポーツカー」です。もちろん、ノーマルのBMWでも相当に気持ち良く走ることができます。しかし、こちらはあくまでもロードユースが前提のモデル。BMW Mシリーズは、サーキットでこそ本来の性能が解き放たれ、水を得た魚のように駆け抜けることができるのです。
つまり「BMW M」の称号を持つクルマに乗ることは、モータースポーツで培ったノウハウのすべてを手に入れるということとイコールなのです。さらに、BMW Mモデルを所有するとは、BMWを語るうえでは欠かせない「駆けぬける歓び」を最大化したモデルを手に入れることであり、同時に公道も走れる究極のスポーツカーが相棒であることを意味するのです。
ちなみに、BMW Mシリーズの「M」はモータースポーツを意味するものであり、そのルーツは1972年に設立されたレース部門である「BMW モータースポーツ社」に起因します。同社が1973年には、ブルー/パープル/レッドの3本ストライプが入った純白の3.0CSLクーペが当時のヨーロッパ選手権で初優勝を遂げ、これが「M」のシンボルとなります。こうして、「BMW モータースポーツ社」が手掛けるBMW Mシリーズは「M」の車名とエンブレムを冠することとなるのです。
その後、パープルのイメージカラーがネイビーに変更されるなどのリニューアルが行われたものの、50年以上経過した現在でも基本的なデザインは変わっていません。ちなみに、現行のデザインは2020年にリニューアルされたものです。
BMW “M”の維持費が高くなる原因とは?
輸入車は日本車よりも維持費が高くなりがち
一般論として、輸入車は日本車よりも維持費が高くなりがちです。最大の理由は海外で生産されたクルマや部品であること。日本に持ち込むまでの輸送コストや関税など、クルマ本体以外に費用がかかるため、その分のコストが価格に上乗せされます。そのため、どうしても高くなってしまうのです。
また、日本にただ輸入すればいいというわけではなく、正規輸入車であればPDI(新車整備)センターでひととおりのチェックを受け、全国の正規ディーラーに配車されます。その維持費も商品に上乗せされるのはやむを得ないといえるでしょう。そしてなにより、輸入車、ひいては欧州車のガソリンはハイオク指定です。
一部の高級車をのぞき、日本車の多くはレギュラーガソリン指定です。ハイオクとレギュラーガソリンの価格差は一般的にリッターあたり10円前後。単純掲載で10リッターで100円、50リッターであれば500円の価格差が毎回のように生じます。これらの要素が複合的に絡み合い、維持費を押し上げているのです。
BMW Mシリーズはノーマルモデルよりも維持費が高くなりやすい
先述のとおり、BMW Mシリーズは、公道も走れる究極のレーシングスポーツカーです。エンジン関連のものを中心に、クルマのあらゆる部品がノーマルモデルよりも高品質かつ高負荷に耐えられるように設計・製造されています。さらにはクルマの生産台数自体が限られるため、それに付随する部品の生産量も抑えられます。そのため、ノーマルモデルよりも高額になる条件がそろっているのです。
ハイパフォーマンスモデルを所有し、その性能を維持することは、ノーマルモデルよりも高いランニングコストがかかるという認識をあらかじめ持っておいた方がいいでしょう。
エンジンや排気量がノーマルモデルよりも大きい
F80型BMW M3 セダンに搭載されるエンジンは「BMW伝統のストレート6」。排気量は2979cc、高精度ダイレクトインジェクションシステム・ダブルVANOS(吸排気可変バルブタイミング)・バルブトロニックを組み合わせた、直6DOHCにツインターボ「S55B30A」エンジンを搭載。最高出力は431ps(317kW)/5500〜7300rpm、最大トルクは56.1kgm(550Nm)/1850-5500rpmを発生します。
方や「F30型」といわれる、ノーマルのBMW3シリーズに搭載されていた、排気量1997cc、直列4気筒DOHCターボ「N20B20B型」エンジンの最高出力は184ps(135kW)、最大トルクは27.5kgm(270Nm)/4500rpmです。これらカタログ上の数値を見比べてみても、同じBMW3シリーズベースでありながら「似て非なるもの」であることが理解できます。
F80型BMW M3 セダンの維持費の内訳
では、F80型BMW M3 セダンを維持するうえでどれくらいの維持費がかかるのでしょうか。
税金
BMW MシリーズとノーマルのBMW3シリーズとでは税制面でも差額があります。
F80型BMW M3 セダン
- 自動車税:51,000円(毎年)
- 自動車重量税:16,400円(1年あたり)
F30型 BMW3シリーズ セダン(一例として)
- 自動車税:39,500円(毎年)
- 自動車重量税:7,500円(1年あたり)
自動車税および自動車重量税の項目を合算するだけでも、年間で1万数千円の出費増となります。そして、ガソリン代などを含めて他の項目もノーマルのBMW3シリーズより高額となることは認識しておいた方が良さそうです。
車検費用
F80型BMW M3 セダンの販売期間は2014年2月~2018年12月。初期モデルであれば初年度登録から10年、最終型であっても6年経過しています。特に初期モデルともなれば4回目の車検を終えたあたり。最終型であっても3回目の車検前後といった個体が多いでしょう。
各個体の走行距離にもよりますが「ただ車検を通すだけ」であれば15万円前後の予算感で済みそうです。たしかに、車検をパスできれば向こう2年間は法律上問題なく公道を走れます。しかし、車検をパスすることとBMW M3本来のパフォーマンスを発揮できるかはまったく別の話なのです。
輸入車の多くがメーカー独自の点検および交換時期(または距離)の項目を設けています。これは車検整備や法定点検とはまったく別の項目と考えてください。たとえば、ブレーキパッドの残量が残りわずかでも、法規上クリアすれば合法となります。それを承知で走り続けていると……。ブレーキパッドはもちろんのこと、ブレーキローターまでダメージを受け、結果的に高額な修理費用がいちどに掛かる可能性もあるので注意が必要です。
燃費
F80型BMW M3 セダンに搭載される直6DOHCにツインターボ「S55B30A」エンジンの燃費について、カタログ上の数値では、燃料消費率JC08モード(国土交通省審査値)で12.2km/Lとされていますが、実燃費は10km/L前後といったところでしょうか。方や、F30型BMW3シリーズセダンに搭載されている代表的なエンジン、直列4気筒DOHCターボ「N20B20B型」は、カタログ上の数値では、燃料消費率JC08モードで16.4km/Lの燃費です。実燃費は13km/L前後といったところです。
エンジン出力はノーマルの約2.4倍、トルクは2倍、排気量差はおよそ1000cc、それでいて実燃費の差は3〜4km/Lです。現代のエコカー並みとはいかないまでも、これだけのハイパフォーマンスエンジンでありながら燃費も両立させる。これこそがBMW社、ひいてはBMW モータースポーツ社の技術力の高さが伺い知れます。
保険料
F80型BMW M3 セダンの自賠責保険料は5,870円(1ヵ月分)~25,830円(24ヵ月分)がひとつの目安となります。また、任意保険については、高級かつ高性能なモデルであるがゆえに高額になりがちです。加入される方の年齢や等級などによっても幅があるため一概にはいえませんが、年間で10万円〜35万円前後を想定しておくと安心です。
維持費を安くする方法とは?
ハイパフォーマンススペックの持ち主であるF80型BMW M3 セダンですが、維持費を安くする方法がいくつかあります。ただし、王道に近道なし。できるだけ手堅く攻めるのがあとあとになって良い結果を生みそうです。
定期的に油脂類を交換する
いかなる状況でもM3本来のパフォーマンスを発揮させるため、定期的な油脂類の交換は必須です。ひとつの目安として、5,000キロまたは1年以内の交換を意識するといいでしょう。また、エンジンの特性にあったオイル選びも重要です。主治医となりうるサービス工場のスタッフと話し合い、最適なオイルを選ぶようにしてください。
修理に社外品や純正OEM品を用いる
こちらも主治医となりうるサービス工場と要相談ではありますが、純正相当品やOEM部品を用いて部品代を抑えるという方法もあります。いずれも純正品を超えるクオリティではなく「似て非なるもの」と認識が必要です。それだけに確かな「目利き」が必要となります。素人判断をぜずに、プロの意見や見立てを参考にしつつ、最終的な判断を下すのが得策といえそうです。
メーカー保証がついている中古車を購入する
今回のF80型BMW M3 セダンのように、ある程度、生産年数が経過している中古車にはあてはまりませんが、メーカー保証を継承できる個体を選ぶのも有効な手段です。保証が適用されるうちにできるだけ部品を交換し、出費を抑えつつ、クルマ自体のコンディションをあげていく。もし、前オーナーが延長保証制度を活用していたらそれは「当たり」なので、しっかりと継承してメーカー保証の恩恵を受けてください。
メーカー保証が切れたあとはディーラー以外でメンテナンスする
一般的に正規ディーラーでの整備はもっとも安心・確実であると同時に、費用も高額です。メーカー保証や各種メンテナンスパッケージに加入している期間は大いに利用したいところですが、メーカー保証が切れたあとに利用するのは、費用対効果という視点で見るとデメリットも増えてきます。さらに、入庫のたびに代替を持ち掛けられることもしばしばです。それであれば、輸入車の取り扱い経験が豊富で、なおかつ自社の整備工場を持つ販売店に愛車をたくした方が費用も抑えられ、なおかつ無闇に代替の話を持ち掛けられることもなく安心です。
サービスフロントやメカニックなどのスタッフも、元ディーラーの勤務経験があったり、なかには複数の現場を経験してきた強者も存在します。いざというときに親身になって相談に乗ってくれる心強い主治医となりうる存在といえるでしょう。
BMWは維持費を踏まえて自分に合った車種を選ぶべし!
BMWが提唱する「駆けぬける歓び」の魅力を享受するには相応の維持費がかかることは少しずつイメージできつつあるのではないでしょうか。これはBMWに限らず、他の輸入車メーカー、さらにはAMGやアウディのS/RSモデルなどについても同様です。
憧れだけでハイパフォーマンスモデルを手に入れると、その維持費に驚くこともあるかもしれません。しかし「ハイパフォーマンスを味わうための必要経費」と心の準備をしたうえで購入・所有するのであれば、ほとんどの場合は想定の範囲内としてご自身を納得させられるでしょう。
また、いきなりBMW Mシリーズのようなハイパフォーマンスモデルを手に入れるのではなく、まずはノーマルのBMWでこのクルマの魅力を存分に味わい、基本的な世界感をしっかりと理解したうえで、応用編としてステップアップするのも有効な手段と考えます。
憧れを現実のものとするにはたしかに少し遠回りの方法といえるかもしれません。しかし、まずはノーマルモデルの良さを体に覚え込ませ、そのうえでBMW Mシリーズの魅力を堪能するというカーライフも、実は物事の本質を理解したうえでのステップアップ、つまり「賢者の選択」といえるのではないでしょうか。
また、中古車選びは販売店をどこにするかでその後のカーライフが大きく変わります。美辞麗句を並べ「売りっぱなし」にして、あとはアフターサービスもなくそれっきり……。これではせっかくの憧れのモデルを手に入れてからの楽しいカーライフが台無しです。
その点、トップランクでは、お客様が望む最高の1台を見つけ最高のカーライフを実現させるためのお手伝いができるよう、日々、細かな努力を積み重ねています。具体的には、仕入れた中古車を自社PDIセンターにて徹底した品質チェックを行ったあと、ショールームに展示をしたり、メーカー保証の継承が可能な高品質かつ高年式の中古車を取りそろえるのもそのひとつです。またトップランクでは、すべてのクルマを国家認定整備士が点検し、保安基準に適合するように整備しています。
お客様の大切なパートナーとなる1台を選ばれた後も、整備・定期点検などを通じて品の高いサービスをご提供してまいります。ぜひ、トップランクのクオリティを体感ください。