ポルシェ911のひとつの到達点、そして往年の911ファナティックを一撃で沈黙させる性能とデザインを併せ持ったGT3シリーズ。
サーキットユースを前提とした「素」のGT3でも充分に魅力的でありながら、派生モデルとしてロードゴーイング仕様のGT3ツーリング、さらには往年のカレラRS2.7のオマージュともいえるGT3RSを限定発売。
まさに全方位隙なしのポルシェらしい、スペシャルな3台を取り上げてみたいと思います。
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911シリーズにおけるGT3、GT3ツーリング、GT3RSの位置づけ
GT3、GT3ツーリング、GT3RSの位置づけを端的に表すと以下のようになります。
- GT3:サーキット走行を前提に996型から設定されている911のロードゴーイングレーサー
- GT3ツーリング:GT3をベースにロードユースを前提にして追加されたグレード
- GT3RS:911のNAエンジン搭載モデルの頂点に君臨する限定車。一見には入手困難
それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
GT3
空冷911からの乗り替え(または増車)、あるいはノーマルのカレラ系からのステップアップとしてGT3を選ぶユーザーが多いことは事実です。
オプションのフルバケットシートを装着すれば、乗り心地を含めてロードゴーイングレーサーそのもの。GT3の良さを十分に味わうためにも、まずはカレラ系のモデルを堪能し、それでも物足りなくなったら、GT3に乗るという順番が良いかと思います。
GT3ツーリングパッケージ
- GT3のエクステリアはちょっと派手…。
- そしてサーキットで走るつもりもない。
- でも高性能を味わいたい。
そんなわがままなユーザーにこそGT3ツーリングパッケージがおすすめです。見た目はカレラ系とそれほど違いはないので、ご近所の目が気になるユーザーにもおすすめです。リアスポイラーなしを好む911ユーザーにもおすすめしたい、まさに通好みな1台です。
GT3RS
NAエンジンを搭載した911の頂点に君臨するモデルがGT3RSです。カレラRS2.7風のエクステリアもマニアをうならせます。
見た目も性能もほぼレーシングカー。あまりのハイスペックゆえ、ただの移動手段にとどまらないクルマといえます。
クルマのことを考えると本来の扱い方ではありませんが、モデル名、立ち位置、エクステリア…。その出自ゆえ、あらゆる観点において、コレクターズアイテムとしてもはずせない1台であることは確かです。
GT3の特徴
カレラ系およびターボモデルと911GT3との決定的な違いは、サーキット走行を主眼に置いたモデルであることに尽きます。
フロントアクスルのダブルウィッシュボーンレイアウトや、911RSRに由来するスワンネック型リアウイングとディフューザーを備えたエアロダイナミクスなど、レースで得られたノウハウ、そしてテクノロジーを市販モデルにフィードバックしている点がGT3ならではの特徴です。
また、最高出力510psを誇る4リッター、水平対向6気筒エンジンは、911GT3 Rのドライブトレインをベースにしたものであり、数々の耐久レースですでにその実力が証明されています。
8400回転までまわる高回転エンジンは、911GT3カップにもほぼ変更を加えずに使用されているほど、レースフィールドとの距離が近いエンジンといえます。
GT3はサーキットにおいて本来の性能を発揮できるスペックを有しながら、日常の使用にも耐えうる柔軟性も兼ね備えた、恐るべしロードゴーイングレーサーマシンなのです。
GT3のスペック
項目 | 詳細 |
---|---|
ボディーサイズ | 全長×全幅×全高=4573×1852×1279mm |
ホイールベース | 2457mm |
車重 | 1418kg (PDKは1435kg) |
駆動方式 | RR |
排気量 | 3996cc |
エンジン | 水平対向6気筒DOHC |
トランスミッション | 6速MT / 7速PDK |
最高出力 | 510ps (375kW) / 8400rpm |
最大トルク | 470N・m (47.9kgf・m) / 6100rpm |
0-100km/h加速 | 3.4秒 |
最高速度 | 320km/h |
992型の911GT3の最高速度は320km/h(PDK仕様車:318km/h)を誇り、991型の911GT3 RSよりもさらに高速です。また、0-100km/hまでを3.4秒で加速します。ポルシェでは、PDK仕様の他に6速マニュアルミッション仕様も用意しています。
モータースポーツから得られた経験に基づく高性能なエアロダイナミクスは大きなダウンフォースを生み出します。また、パフォーマンスポジションでは、手動で設定されるウイングとディフューザーエレメントが、高速コーナリングに有効な空力を大幅に高めます。
GT3の走行性能
ニュルブルクリンクのノルドシュライフェにおいて992型の911GT3は、NAエンジンを搭載した市販モデルとして初めてラップタイムが7分を切っています。
開発ドライバーのラース・ケルンは、20.8kmのコースを6分59秒927で走破し、かつてベンチマークとして使用されていた20.6kmのコースでは6分55秒2を記録しました。
ワイドなボディ、大径ホイール、そして新たに採用されたさまざまな装備にもかかわらず、911GT3の重量は先代と同じ。
マニュアルミッション搭載車の車重は1418kg(PDK仕様車:1435kg)です。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のフロントリッド、軽量ガラスウインドウ、最適化されたブレーキディスク、軽合金製鍛造ホイール、およびリアシートコンパートメントカバーが軽量化に寄与している他、軽量スポーツエグゾーストシステムも10kg軽量化されています。
992型の911GT3は、無段階電動調節式エグゾーストフラップを備えており、911らしいサウンドを奏でつつ、Euro 6d ISC FCM(EU6 AP)排出ガス基準に適合しています。
なお、燃料消費量(複合)は13.3リッター/100km(PDK:12.4リッター/100km)です。
GT3ツーリングパッケージの特徴
「ツーリングパッケージ」という名前のルーツは、1973年モデルにデビューした伝説の911カレラRS2.7に用意された仕様にあります。その後は964カレラRSでもツーリングモデルが用意されました。
ポルシェは2017年に991型911GT3でツーリングパッケージをデビューさせています。それ以来、このGT3ツーリングパッケージは、控えめな表現とクラシックな佇まいが通好みの911ファナティックに愛されています。
992型の911GT3ツーリングパッケージとGT3とのもっとも大きな違いは、固定式リヤウイングのオミットにあります。代わりに自動展開するリアスポイラーが高速走行時に必要なダウンフォースを確保しています。
992型の911GT3ツーリングパッケージの特徴として、サイドウインドウのハイグロスアルマイト製シルバーカラーのトリムストリップが挙げられます。フロントエンドは、エクステリアカラーと同色に塗装されます。
インテリアには911 GT3ツーリングパッケージ仕様車専用のブラックのエクステンデッドレザーアイテムが採用されています。さらに、ダッシュボード前部とドアトリムパネル上部セクションには、特殊エンボス加工が施されています。なお、オプション装備はGT3とほぼ同じものを選ぶことが可能です。
GT3ツーリングパッケージのスペック
項目 | 詳細 |
---|---|
ボディーサイズ | 全長×全幅×全高=4573×1852×1279mm |
ホイールベース | 2457mm |
車重 | 1418kg |
駆動方式 | RR |
排気量 | 3996cc |
エンジン | 水平対向6気筒DOHC |
トランスミッション | 7速MT / 7速PDK |
最高出力 | 510ps (375kW) / 8400rpm |
最大トルク | 470N・m (47.9kgf・m) / 6100rpm |
0-100km/h加速 | 3.4秒 |
最高速度 | 320km/h |
タイヤ | (前) 255/35ZR20 97Y XL / (後) 315/30ZR21 105Y XL |
992型の911GT3ツーリングパッケージのエンジンフードには、“GT3 touring”ロゴが入ったバッチが配され、オーナーの所有欲を満たします。
また、サイドウインドウとスポーツエグゾーストシステム テールパイプのトリムストリップはシルバーカラー仕上げとなっています。
さらに、オプションのエクステリアツーリングパッケージを選ぶとサテングロスブラック仕上げになり、ヘッドライトモジュールもダークティンテッド仕上げとなります。
GT3ツーリングパッケージの走行性能
カタログ上のスペックは992型の911GT3と同一です。どちらかといえば「GT3のスペックは魅力だけど、サーキットではなく公道で味わいたいユーザー向け」のモデルです。
空冷時代を含めて、長年911を愛用してきたユーザーに好まれる傾向があり、さりげなくもハイスペックの持ち主、まさに通好みの911といえるでしょう。
GT3RSの特徴
まず目を引くのが、エクステリアデザインの違いです。GT3のデザインが大人しく見えてしまうほど巨大なリアウイング、そしてフロントフェンダーに設けられた巨大なエアアウトレット、そしてカーボン素材むき出しのフロントフード。
そしてカレラRS2.7を彷彿とさせるカラーリング。GT3以上にスペシャルモデルとしての演出・雰囲気を全身から発しているのがGT3RSの特徴といえます。
992型の911GT3RSの特徴のインテリアは、RSモデル伝統のスタイルに仕上げられてアウイングのパーツ、エクステリアミラーのアッパーシェルがカーボン織り目仕上げになります。
フロントとリアのスタビライザー、リアカップリングロッド、リアアクスルのシアーパネルはCFRP(炭素繊維複合材料)製で、ドライビングダイナミクスのさらなる向上に貢献します。CFRP(炭素繊維複合材料)で製造されたロールバーは、スチールバージョンと比較して約6kg軽量化されています。
これに加えて、ヴァイザッハパッケージには、モータースポーツから派生した磁気テクノロジーを採用したPDKパドルシフトが採用されています。これにより、より精確な圧力ポイントと明確に知覚できるクリックによって、シフトチェンジはさらにダイナミックになります。
またヴァイザッハパッケージのオプションには、8kg軽量化されるマグネシウム鍛造ホイールも用意されています(なお、走行性能については後述します)。
GT3RSのスペック
項目 | 詳細 |
---|---|
ボディーサイズ | 全長×全幅×全高=4572×1900×1322mm |
ホイールベース | 2457mm |
車重 | 1490kg |
駆動方式 | RR |
排気量 | 3996cc |
エンジン | 水平対向6気筒DOHC |
トランスミッション | 7速PDK |
最高出力 | 525ps (386kW) / 8500rpm |
最大トルク | 465N・m (47.4kgf・m) / 6300rpm |
0-100km/h加速 | 3.2秒 |
最高速度 | 296km/h |
タイヤ | (前) 275/35ZR20 102Y XL / (後) 335/30ZR21 109Y XL |
高回転の4リッターNAエンジンは、992型の911GT3と比較してさらにファインチューニングが施され、驚異の525psを発揮します。静止状態から100km/hまで3.2秒で加速し、296km/hの最高速度に達します。
これは、主に変更されたカムプロファイルを備えた新しいカムシャフトによって実現され、モータースポーツから派生したシングルスロットルインテークシステムとリジッドバルブドライブも採用されています。
また7速PDKは、ギア比が全体的に911GT3よりもローギアード化されています。さらにアンダーボディのエアインテークにより、サーキットで頻繁に走行する場合にも、PDKは高負荷に耐えることができます。
992型の911GT3RSには、センターロック式軽合金製鍛造ホイールが標準装備されます。フロントには、対向6ピストン式アルミニウム製モノブロック固定キャリパーと、直径408mmのブレーキディスクが採用されており、911GT3と比較して、ピストン径が30mmから32mmに拡大され、ディスクの厚さが34mmから36mmに増えています。
リアには、対向4ピストン式のユニットと直径380mmのブレーキディスクが採用されています。また、オプションのポルシェセラミックコンポジットブレーキ(PCCB)はフロントに410mmディスク、リアに390mmディスクが備わります。
GT3RSの走行性能
992型の911GT3RSの特徴として、センターラジエーターコンセプトが挙げられます。このコンセプトは、ル・マンでクラス優勝を飾った911RSRに最初に使用された後、911GT3Rへ採用されたものです。
992型の911GT3RSは、3つのラジエーターレイアウトの代わりに、他の911モデルではラゲッジスペースにあたるノーズの中に配置された、傾斜した大容量のセンターラジエーターを利用します。
その結果、両サイドにできたスペースを使用して、アクティブエアロダイナミクスエレメントを統合することが可能となったのです。フロントの無段階調節式ウイングエレメントと2分割リアウイングは、他の多数の空力対策との組み合わせで、200km/h時に合計409kgのダウンフォースを発生します。
992型の911GT3RSが発生するダウンフォースは、先代の991、2世代の2倍、992型の911GT3の3倍に達し、285km/h時のダウンフォースは計860kgにおよびます。これまでのGT3RSよりもかなりレーシングカー寄りのエクステリアを採用しているのは、あくまでもサーキットユースを大前提としているためなのです。
また、ポルシェの市販車としては初となる「ドラッグリダクションシステム(DRS)」を装備しています。DRSとは、サーキットのストレートで空気抵抗を抑えて高速を得るために、特定の作動範囲内においてスイッチを押すだけでウイングをフラットにすることができる機構です。
またエアブレーキ機能は、高速走行中の緊急ブレーキ時に作動します。その際、フロントとリアのウイングエレメントが最大に設定され、空力による減速効果を生み出してホイールブレーキを大幅にサポートします。
それぞれどんな人におすすめか
3つのモデルについて詳しく解説しましたが、それぞれどんな人におすすめか、以下で解説します。
走行シーンや用途に応じたおすすめのモデル
一見するとキャラクターが被っているようにも映るGT3、GT3ツーリング、GT3RSではありますが、その違いは明白です。それぞれのモデルの選び方のポイントについてまとめたので、参考にしてみてください。
- GT3:多少、マシンが痛んでも本気でサーキットを攻めたい方
- GT3ツーリング:控えめなエクステリアとロードユースを求めたい方
- GT3RS : 予算はぬきにして究極の911を所有したい方
どうしてもモデルを決められないという方はトップランクのスタッフまで、お気軽にお問い合わせください。
予算と入手難易度を考慮した判断
現行911のスペシャルモデルということで、GT3、GT3ツーリングであれば3,000万円以上、GT3RSに関しては売り物が見つかった時点ですぐに押さえる動きが必要になります。
GT3の新古車、そして中古車は比較的市場に出回っているので、プレミア価格に納得ができるのであれば思い切って決断するのもありだと思われます。
GT3ツーリングはマニアックなモデルゆえ、市場に出回る個体も少なめです。希望の仕様をある程度絞り込んでおいて、輸入車販売に長けたショップに探してもらうのが得策といえるでしょう。
そしてGT3RSはようやく日本国内で街中を走りはじめたばかりです。新車同然の新古車が見つかる可能性もありますが、5,000万円以上の値がついても不思議ではありません。その点を納得できるかが入手する上での決め手となりそうです。
それぞれの資産価値
GT3、GT3ツーリング、GT3RSともに、911最後の純内燃機関を搭載し、しかもNAエンジンという、将来的に資産価値の高いモデルといえます。走行距離を抑え、適切なメンテナンスを行い、さらに保管状態がよくボディに傷がなければ、購入時よりも高値で売却できる可能性はかなり高いでしょう。
さらに、GT3、GT3ツーリングであれば、左ハンドル+6MTモデルを押さえれば完璧です。資産価値としてGT3、GT3ツーリング、GT3RSの各モデル(または全モデル)を所有するか、高回転NAエンジンをサーキットや公道で味わうか、実に悩ましいところです。
気になる中古車がございましたら、お気軽にご連絡ください。皆さまからのお問い合わせを心よりお待ち申し上げております。