3代目ロータスエキシージがデビューしたのは2012年のことです。それから4年後の2016年、車重1125kgという軽量なボディに、トヨタ製の3.5L V6自然吸気エンジンをベースにロータスが独自でスーパーチャージャーを組み合わせたパワーユニットを搭載し、最高出力350psを発揮する「ロータスエキシージ スポーツ350」が登場しました。
ライトウェイトスポーツでありながら強力なユニットを心臓部に持つこのモデルの魅力や、ライバル車、おすすめのユーザー像を考察してみました。
ロータスエキシージとは?

1995年に発表された「ロータスエリーゼ」は、押し出し接着結合されたアルミニウム、ハイテクコンポジット、ロータス社伝統のライトウェイトスポーツのノウハウを活かし、少量販売のスポーツカー業界に革命をもたらしたモデルです。
そのエリーゼで培った技術を活かし、2000年に「ロータスエキシージ」がデビューします。エキシージは、安全性と先進性を兼ね備えつつも、サーキット走行においてその性能をいかんなく発揮するポテンシャルを身に付けていました。
そのパフォーマンスは、サーキットだけでなく、公道においても刺激的な走りをもたらし、熱狂的なユーザーを獲得することとなります。こうしてエキシージは、瞬く間に「公道を走るレースカー」の代名詞となったのです。
エキシージに搭載されたエンジンは、トヨタ セリカなどに積まれる1.8L 直4DOHC16バルブVVTL-i。つまりトヨタ製のエンジンが搭載されるため、高い信頼性とパフォーマンスが得られるのです。
それに加えて、先代にあたる2代目エキシージに搭載された、ローバー製KシリーズVVCエンジンの最高出力は178psであったのに対し、3代目エキシージに搭載されたトヨタ製のエンジンの最高出力は190ps。レッドゾーンは8350rpmという、超高回転型ユニットであることも魅力のひとつです。
ギアボックスは6段MTが組み合わされ、0-100km/hを約5秒、最高速度は224km/h。足まわりは、ロータスライド&ハンドリングチームによってチューニングされる点も、ロータスファンにはたまらないポイントといえます。
ロータスエキシージの歴史をふりかえる
2000年にデビューし、2021年に惜しまれつつも生産を終了したロータスエキシージ。ここで21年の歴史をふりかえってみましょう。
初代(シリーズ1:2000年–2002年)
- ベース車:エリーゼ S1
- エンジン:1.8L 直4 Kシリーズ(ロータスとローバーが協業)
- 標準モデル:120ps〜177ps
固定ルーフ、ワイドボディ、リアウイングで空力性能を強化。車重わずか780kg前後と、超がつくほどのライトウェイトモデル。かなりサーキットユースに振ったモデルであり、生産台数は約600台と極めて少数。
2代目(シリーズ2:2004年–2010年)
- ベース車:エリーゼ S2(トヨタ製エンジンを採用)
- エンジン:トヨタ製 1.8L 2ZZ-GE(最高出力は190ps〜220ps。スーパーチャージャー付きモデルも追加)
- エキシージ 190:NAエンジン
- エキシージ S (2006年〜):220ps、スーパーチャージャー搭載
- エキシージ カップ 240/255:サーキットに特化モデル
- S1に比べ信頼性向上(トヨタエンジン採用)
- 車重は約890〜930kg
- ワンメイクレースやクラブマンレーサーとして人気
3代目(シリーズ3:2012年–2021年)
- 大幅進化:プラットフォームはエリーゼ系を流用しつつも、よりワイドボディに
- エンジン:トヨタ製 3.5L V6(2GR-FE)+スーパーチャージャー付き
- 最高出力:350ps〜430ps
- エキシージ S(2012年):350ps、6速MTまたはIps(AT)。
- エキシージ スポーツ350 / 380 / 410:軽量化&高出力化した進化版
- エキシージ カップ 430(2017年〜):最高出力431ps、最高速290km/hを誇るエキシージの最終進化版
- エンジンをV6化することで大幅にパワーアップ
- 車重は約1,100kgと、軽量さを活かしたコーナリングは健在
- 最終版:エキシージ カップ 430 ファイナルエディション(2021年モデル)はエキシージの集大成ともいうべきモデル
3代目ロータスエキシージの新車価格および中古車相場

- スポーツ350(6速MT/右):9,900,000円
- スポーツ410(6速MT/右):13,585,000円
※この価格は2020年4月時点のものです。
- スポーツ350(6速MT・6速AT/右):9,720,000円
- スポーツ350ロードスター(6速MT・6速AT/右):10,227,600円
※この価格は2016年8月時点のものです。
- カップ380:(2017年6月/限定60台):13,662,000円
- カップ430:(2019年1月/限定10台):17,280,000円(10月に17,600,000円へと変更)
- スポーツ350GPエディション:(20120年2月/限定20台):11,330,000円
- スポーツ410 20thアニバーサリー エディション:(2020年7月/世界限定150台):13,585,000円
- スポーツ390ファイナルエディション:(2021年2月/限定50台):11,770,000円
- スポーツ420ファイナルエディション:(2021年2月/台数非公表):13,970,000円
3代目ロータスエキシージ
- 平均価格:9,693,000万円
- 価格帯:6,880,000万円~21,820,000万円
※この価格は2025年8月時点のものです(Webカーセンサー調べ)。
ロータスエキシージ スポーツ350のモデル概要・主なスペック

エキシージ スポーツ350には、アルミシャーシ構造と空気力学的効率の高いコンポジットボディが採用されています。純粋にパフォーマンスを追求することに注力して開発されたこのモデルは、従来のモデルよりもシャープかつダイレクトなドライビングフィールを手に入れています。
エキシージ スポーツ350の重量はわずか1125kgであり、エキシージSと比較して実に51kgもの軽量化に成功しました。また、ロードスターは、クーペよりもさらに10kgも軽量化。エキシージにおける最軽量バージョン(当時)としたモデルです。
V6 3.5Lスーパーチャージャー付きエンジンの最高出力は350ps、最大トルクは400N・m/4500rpmを発揮します。改良されたサスペンションのチューニングとホイールのジオメトリーが正確無比なハンドリングを実現しています。0-100km/加速はわずか3.9秒、最高速は時速274km/hを誇ります。
エキシージ スポーツ350のサスペンションは硬めのダンパーと改良されたジオメトリーにより極めてクイックであり、低められた重心や4ピストンのブレーキキャリパーの効果も加わって、ロータスのテストコースでエキシージSよりも2.5秒速い、1分29秒8のラップタイムをたたき出しました。これは、ロータス史上初めて、有名なヘセルのテストコースのラップが1分30秒を下回った記録です。
従来型のグラステールゲートに代わり、軽量で強度・剛性の高いリアルーバー付きテールゲートを採用。重心をさらに低くするだけでなく、エンジンベイの放熱性も高められています。この装備は、1980年にロータスエスプリターボに初めて採用されたものです。
また、エキシージ スポーツ350には、ステアリングの後部に設置されている鍛造アルミ製のパドルでマニュアル操作が可能であり、さらに6速AT仕様も設定されています。シフトアップは240ミリ/秒、シフトダウンもオートマチックのスロットルブリップで素早い操作が可能です(スポーツモード時)。
ロータスエキシージ スポーツ350のライバル車について
軽量でありながらハイパワーエンジンを搭載する「ロータスエキシージ スポーツ350」には、さまざまなライバル車が存在します。そのなかでも特に強力なライバル車ともいえるモデルをピックアップしました。
- 全長×全幅×全高:4080×1800×1130mm
- ホイールベース:2370mm
- 車両重量:1125kg
- 駆動方式:MR
- トランスミッション:6速MT
- エンジン:V型6気筒DOHC
- 排気量:3456cc
- エンジン最高出力/最大トルク:350ps/400N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:4456×1801×1269mm
- ホイールベース:2484mm
- 車両重量:-
- 駆動方式:MR
- トランスミッション:6速MT
- エンジン:水平対抗6気筒DOHC
- 排気量:3995cc
- エンジン最高出力/最大トルク:420ps/420N・m
- ステアリング:右

- 全長×全幅×全高:3110×1575×1115mm
- ホイールベース:2225mm
- 車両重量:545kg
- 駆動方式:FR
- トランスミッション:6速MT(7速Sトロニック)
- エンジン:直列4気筒DOHCスーパーチャージャー付き
- 排気量:1999cc
- エンジン最高出力/最大トルク:310ps/298N・m
- ステアリング:右
- 全長×全幅×全高:3990×1870×1185mm
- ホイールベース:2380mm
- 車両重量:1100kg
- 駆動方式:MR
- トランスミッション:6速AT
- エンジン:直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1742cc
- エンジン最高出力/最大トルク:240ps/350N・m
- ステアリング:右/左
- 全長×全幅×全高:4499×1810×1294mm
- ホイールベース:2450mm
- 車両重量:-
- 駆動方式:RR
- トランスミッション:7速MT(7速PDK)
- エンジン:水平対抗6気筒DOHCツインターボ
- 排気量:2981cc
- エンジン最高出力/最大トルク:370ps/450N・m
- ステアリング:右/左
- 全長×全幅×全高:4440×1905×1250mm
- ホイールベース:2650mm
- 車両重量:1640kg(1660kg)
- 駆動方式:フルタイム4WD
- トランスミッション:6速MT(7速Sトロニック)
- エンジン:V型8気筒DOHC
- 排気量:4163cc
- エンジン最高出力/最大トルク:430ps/430N・m
- ステアリング:右/左
ロータスエキシージ スポーツ350を魅力と推す理由とは?
ではここで、ロータスエキシージ スポーツ350を推す理由について考察していきましょう。
まず1つめに「スポーツドライビングを好むドライバーにはたまらないダイレクト感」が挙げられます。軽量なボディと電子制御に頼らないハンドリング性能、V6+スーパーチャージャー付きエンジンがもたらす加速感。軽さとパワーを両立したロータスエキシージ スポーツ350は、公道はもちろん、サーキットにおいてその真価を発揮します。
軽量なボディと強力なエンジンとブレーキ、そして何よりドライバーのテクニックがあれば、筑波サーキットなどのコースではかなりのラップタイムが期待できます(コンディションとドライバー次第で1分切りも期待できます)。まさに「軽さは正義」を体現したモデルといえます。
2つめに「賢者の選択」が挙げられます。ライバル車を見ても分かるとおり、他メーカーにも魅力的なモデルが数多く存在します。そのなかでもロータスは走りに特化している分、内装の仕立てもアルミむき出しであり、必要最低限の装備に徹しています。デザインも派手さを抑えた機能美に満ち溢れたものであり、裏を返せば地味な存在ともいえます。
しかし、さまざまなスポーツカーを乗り継いできた方が一瞬で魅せられるほど、好みがあえばこれほど所有感を満たすモデルはなかなかありません。確かな審美眼を持つ、まさに「賢者の選択」ともいえるモデルです。
3つめに「高い市場価値」が挙げられます。もともと少量生産であり、中古車市場に流通している個体も少なめ。それでも常に需要があるので、リセールバリューの高さは折り紙付きです。
ダウンサイジングターボやEVが主流になるなかで、今後3.5リッター V6 NAエンジン+スーパーチャージャーといったパッケージを持つライトウェイトスポーツカーがデビューする確率は極めて低いと(残念ながら)言わざるを得ません。それだけに、半永久的に希少価値を維持できるモデルであるといえます。
つまり「最新の安全装備や快適装備はいらない、ピュアに走りを楽しみたい人」にとって、唯一無二の選択肢と言えるモデルがロータスエキシージ スポーツ350です。
ロータスエキシージ スポーツ350はどのような方におすすめか?
クルマとして得難い魅力を持つロータスエキシージ スポーツ350。どのような方におすすめなのでしょうか。
ひとことで言うなら「軽量かつコンパクトで扱いやすいスーパースポーツを求める方」であるといえます。ロータスエキシージ スポーツ350のボディサイズは全長×全幅×全高:4080×1800×1130mmと、市街地でも扱えるサイズです。これがフェラーリやランボルギーニともなれば、全幅が2000mm近くとなります。
結果として取り回しが難しくなるだけでなく、ボディが大柄な分、車重増にも直結します。ロータスエキシージ スポーツ350においても、極めて低い車高とスパルタンな内装ゆえに通勤で使うのはなかなかハードなモデルといえますが、休日のドライブやスポーツ走行にはうってつけの1台です。
さらに、愛車(趣味車)を手にいれる際に「軽さは正義」を重視する方であれば、直接的なライバル車といえるポルシェ 718ケイマンGT4よりもロータスエキシージ スポーツ350をおすすめします。718ケイマンGT4も、ノーマルの718ケイマンよりはるかに俊敏な挙動を示しますが、「ヒラヒラ感」そして「ミズスマシのように走る」軽やかな動きではロータスエキシージ スポーツ350に軍配が上がります。
サーキットやワインディングにおけるスポーツドライビングを本気で楽しみたい方や、ライトウェイトスポーツモデル、そして「公道を走れるレーシングカー」を探している方にこそおすすめしたいモデルといえます。
ロータスエキシージのメンテナンスを安心して任せられるショップ選びとは?

現代のクルマでありながら、最新の電子デバイスとは距離を置いてきたロータス。それはエリーゼおよびエキシージも例外ではありません。電子デバイスを持たないシンプルなモデルだからといって、どのショップでもメンテナンスできるかというと決してそうではありません。
絶妙なバランスのうえに成り立っているモデルだけに、メーカーが推奨するメンテナンスが必須です。それゆえに、歴代のロータスエキシージの新車のコンディションを知るショップやメカニックに愛車を託すことが非常に重要です。デリケートなクルマゆえに、扱い方を誤ると、クルマのバランスを崩すだけでなく、時には壊してしまう可能性もあります。
輸入車はもちろんのこと、ロータスに精通した、あるいは専門とするショップに預けることが、愛車のコンディションを長きに渡って維持する大切なポイントなのです。
