いまや、数あるポルシェのラインナップのなかで、ポルシェの年間の販売台数の6割以上を占めるほど最強の2トップといえるのが「マカン」と「カイエン」です。カタログや画面上で見る限りでは見た目も似ているし、その違いがよく分からない・・・。
そんな方に向けてマカンとカイエンの違いについて解説していきましょう。
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マカンとカイエンの基本情報
まずは、マカンとカイエンの基本情報から。自他ともに認めるクルマ好きの方にとってはすでにご存知のことばかりかもしれません。しかし、ポルシェというブランドの裾野を大きく広げたマカンとカイエンだけに、かみくだいて解説していきます。
それぞれのクルマの基本的な情報、市場での位置付けについて
マカンとカイエンは、クルマとしては「SUV」のカテゴリーに属し、ポルシェのラインナップのなかではきょうだい車として位置づけられています。先にデビューしたのが、2002年に登場した兄貴分のカイエン。現在、新車で購入できるモデルは、2018年にデビューした3代目となるカイエンです。
そして弟分のマカンは2014年にデビュー。開発中のコードネームが「カイエン・ジュニア」であったことからも、カイエンよりもコンパクトなモデルだということが分かります。去る2024年1月25日に、2代目のマカンがEVモデルとして発表されたばかりです。EVモデルである「タイカン」に続き、2代目マカンも電気機関車として新たなスタートを切ることになるのです。
なお、初代マカンはプラットフォームおよびコンポーネンツの1/3をアウディ Q5と共有しており、異母兄弟のような関係ともいえます(初代カイエンもフォルクスワーゲントゥアレグと共通のプラットフォームが使用されており、現行モデルもフォルクスワーゲングループが開発したMLBプラットフォームを採用しています)。
デザインやサイズの違いについて
まずは、マカンとカイエンのボディサイズを比較してみましょう。
全長×全幅×全高:4696×1923×1624mm ホイールベース:2807mm
全長×全幅×全高:4918×1983×1696mm ホイールベース:2895mm
メルセデスベンツGLCやアウディQ5などとほぼ同じボディサイズの値が示すとおり、決してマカンがコンパクトなSUVというわけではないのですが、カイエンと比較するとひとまわり小さいことが一目瞭然です。
車体のデザイン自体も、マカンはどちらかというとリアゲートの傾斜がきつく、またボディサイドも抑揚が抑えられており、全体的に引き締まって見えます。そしてカイエンはドアパネルやリアフェンダーを中心にボリュームがあり、大柄なクルマであることを印象づけています。
エンジンやパフォーマンスの違い(一番下位グレード同士と一番上位グレード同士での比較、以下同様)
では、マカンとカイエンのエンジンおよびパフォーマンスの違いをそれぞれのベースモデルとトップグレードを軸に比較してみましょう。
両車種のエンジンスペックの詳細な比較
- 直列4気筒DOHCターボ
- 排気量:1984cc
- 最高出力:245ps
- V型6気筒DOHCターボ
- 排気量:2894cc
- 最高出力:440ps
- V型6気筒DOHCターボ
- 排気量:2994cc
- 最高出力:340ps
- V型8気筒DOHCターボ
- 排気量:3996cc
- 最高出力:739ps(システム出力)
エンジンスペックを見比べてみると、マカンおよびカイエンともに、ベースモデルとトップグレードでは倍近い差があります。また、マカンとカイエンで比較してみても、それぞれのヒエラルキーが明確であることが一目瞭然です。
加速力、最高速度、燃費などの性能面の違い
では、加速力、最高速度、燃費のパフォーマンスの違いはどうでしょうか?
・0-100km/h加速:6.7秒
・最高速度:225km/h
・燃費(WLTCモード):10.1km/L
・0-100km/h加速:4.5秒
・最高速度:270km/h
・燃費(WLTCモード):9.2km/L
・0-100km/h加速:6.0秒
・最高速度:248km/h
・燃費(WLTCモード):8.6km/L
・0-100km/h加速:3.7秒
・最高速度:295km/h
・燃費(WLTCモード):8km/L
ここでも、ベースモデルとトップグレードのパフォーマンスの違いは一目瞭然です。また、マカンよりも大柄な(車重がある)カイエンの方が、スペックで勝っています。下位モデルが上位モデルよりも性能面で上回ることは、少なくともポルシェにおいて覆されることのない不文律といえるのです(カイエンよりも車重が軽いマカンの方が燃費において有利なのは物理的なことであり、例外といえそうです)。
走行性の違い
性能面ではマカンに対してカイエンが上位に位置することははっきりしました。ここでは走行性の違いについても考察してみました。
マカンとカイエンの走りの味付けの方向性
マカンおよびカイエンいずれも、SUVとしてはかなりスポーティな味付けの走りであることは間違いありません。重心の高いクルマという特性を理解した走りができるドライバーであれば、首都高やワインディングロードのようなコーナーが連続するような場面でも下手なスポーツカーを相手に遜色ないパフォーマンスが発揮できるほどです。
では、マカンとカイエンの走りの味付けの方向性を比較した場合、ボディがコンパクトで、なおかつ車重が軽いマカンの方が俊敏な走行を味わうことができます。さらに、車高が下げられるなどのスポーツ性が強調されたマカンGTSであれば、SUVであることを忘れそうになる場面があるほどです。対するカイエンは、マカンと比較してエンジンパワーで圧倒しています。高速道路のような長いストレートが続く道であれば、カイエンのパワーを活かした走りが期待できます。
内装と快適性の違い
インテリアデザイン、座席の快適性、収納スペースの比較
インテリアデザインについては、まずはカイエンで新たなデザインの提案がなされ、マカンもマイナーチェンジ時などにそれに準じたものにアップデートされるという傾向があります。2代目カイエンおよびデビュー時のマカンのインテリアの全体的なデザイン、スイッチ類の意匠などは911(991型)に近いものが採用されていました。しかし現行モデルのカイエン、初代マカンの後期モデルでは911(992型)のデザインに近い、タッチパネルを多く用いたものとなっています。最新モデルのインテリアのデザインと見比べると、過去のモデルは古さが否めないことも事実です。
また、メーターについては、ボクスター/ケイマンのメーターが3連であるのに対して、911は伝統の5連が採用されているのと同じように、マカンは3連ですが、カイエンは5連と明確に差別化されています。それぞれのモデルのヒエラルキーが明確に現れているポイントのひとつといえます。
座席の快適性については、ポルシェのSUVモデルだけあって、マカンおよびカイエンともに適度にタイトなシートとなっています。なかでもマカンの方がよりスポーティさが強調されており、このあたりは好みが分かれそうです。また、マカンおよびカイエンともにオプションのシートヒーターおよびシートベンチレーターの装備の有無によっても快適性が異なってきます。
そして荷室の容量についてはマカンが500~1500Lであるのに対して、カイエンは770~1710Lと、後者の方が容積が大きいことが分かります。これは単純に車格(ボディサイズ)に因るものといえそうです。
インフォテイメントシステムと運転支援システムの違い
初代マカンでは、タッチセンサー式ガラスルック画面を備えた新しいセンターコンソールや、10.9インチタッチスクリーンとオンラインナビゲーションを含むネットワーク化されたポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)などが標準で装備されています。
いっぽうカイエンでは、タッチ式の12.3インチモニターが採用され、ナビゲーションおよびインフォテインメント機能の操作が可能であり、さらにはメーターパネルのデータを分析することもできます。これに加えて、ポルシェコミュニケーションマネジメントシステム(PCM)を一括制御し、ドライバーは従来と同じく多くの運転機能や快適機能、標準装備のオンラインナビゲーションやマルチメディア機能を操作することが可能となっています。
また、マカンおよびカイエンともに、専用のアプリをスマートフォンにインストールすることで、車両データや位置情報などを離れた場所からチェック可能できるなど、多彩な機能を備えた「Porsche Connect(新車登録時から3年間は無料)」の利用が可能となっています。
価格とコストパフォーマンスの違い
この項目では、2024年2月時点のカーセンサーに掲載されているデータを基に、マカンとカイエンの中古車の価格とコストパフォーマンスの違いについて考察してみましょう。
両モデルの価格帯とそれに見合う価値について分析
- 平均価格:633.1万円
- 価格帯:228万円~1598万円
- 掲載台数:486台
- 平均価格:978.4万円
- 価格帯:498.8万円~1980万円
- 掲載台数:167台
中古車相場においても、両車の価格差は明確です。と同時に、初期モデルではすでに10年落ちとなるマカンでも、走行距離が少なかったり、マカンターボのようなトップグレードでは400万円前後という強気の価格設定にも驚かされます。それだけマカンの中古車は人気が高いという裏付けでもあるのです。
市場と競合車種との比較
あらゆる自動車のカテゴリーにおいて、屈指の激戦区でもあるSUV。マカンおよびカイエンいずれも高い人気を獲得しているとはいえ、強力なライバルも数多く存在します。
同セグメントの他ブランドとの比較
欧州車および日本車を中心に、マカンおよびカイエンの直接のライバルともなりうるモデルを挙げてみました。これだけでもいかにSUVというカテゴリーが激戦区であるかが分かると思います。
- マカン:GLA・GLB・GLC・GLC・GLC Coupé・EQA・EQB・EQC
- カイエン:Gクラス・GLE・GLE Coupé・GLS・マイバッハGLS・EQE・EQS
- マカン:GLA・GLB・GLC・GLC
- カイエン:Gクラス・GLE・GLE Coupé・GLS・EQE
- マカン:X2・X3・iX・iX3・iX60
- カイエン:X4・X5・X6・XM・X7・X6M
- マカン:Q5・Q5 スポーツバック・SQ5・SQ5 スポーツバック・Q4 e-tron・Q4 e-tron スポーツバック
- カイエン:Q7・SQ7・RS Q7・Q8・SQ8・RS Q8・Q8 e-tron・Q8 スポーツバック e-tron・e-tron・e-tron スポーツバック・e-tron S・e-tron S スポーツバック
- カイエン:ベンテイガ
- カイエン:DBX
- カイエン:レンジローバー・レンジローバースポーツ
- カイエン:ディフェンダー
- マカン:E-ペイス
- カイエン:F-ペイス・I-ペイス
- カイエン:ウルス
- マカン:グレカーレ
- カイエン:レヴァンテ
・マカン:トナーレ・ステルヴィオ
- マカン:XC60
- カイエン:XC90
- マカン:NX・RX・RZ
- カイエン:LX・GX
マカンとカイエンが占める市場での独自性
マカンとカイエンが占める市場での独自性をひと言で表現するなら「ポルシェブランドのクルマであること」に尽きます。スポーツカーとしてのポルシェは求めていないけれど、ファミリーカーとして、あるいは快適な足としてポルシェブランドのクルマを所有したいというユーザーは確実に存在します(それゆえ、ポルシェの屋台骨を支える大ヒットモデルに成長したともいえます)。
多少デザインが好みでなかったり、あるいは快適性や収納スペースに思うところがあったとしても「ポルシェブランドのクルマを所有したい」というユーザー心理が勝っているのです。まさにポルシェのブランド力があってこそ成せる業であり、圧倒的な優位性ともいえるでしょう。
それぞれどんな人におすすめか?
マカンとカイエン、どちらがいいのか?悩ましいところではあると思います。それぞれに適しているドライバー像を考察してみました。
◎マカン:SUVであってもスポーティに走らせたい、駐車スペースが限られている、夫婦など、オーナー以外のドライバーが運転することもある
◎カイエン:どっしりとした重厚かつ安定感のある乗り味が好み、ポルシェであってもゆったり乗りたい、エンジンパワーにゆとりが欲しい
ポルシェのエンブレムをボンネットに冠するSUVだけに、スポーティな乗り味であることが大前提としてあります。そのなかでも、キビキビさを求めるならマカン、ゆとりを求めるならカイエンを視野に検討してみてください。
読者に対する選択肢や購入アドバイス
繰り返しになりますが、マカンとカイエンは似て非なる2台です。乗り味やボディサイズ、見切り、内装のデザインなど、実車を見てみないとどちらが好みかを見極めるのは難しいかもしれません。
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