ポルシェ初のSUVであるカイエンは、ポルシェのアイコンである911シリーズを連想させる流麗なデザインを纏った外観が魅力のモデルです。
動力性能もその外観に見合ったもので、エンジンは高級サルーンの928に搭載されていたものと同型式のV型8気筒を受け継いでいます。
初代では自然吸気で340馬力、ターボモデルでは450馬力を発生するハイパワーユニットで、その加速は911やボクスターに匹敵します。
ベースはVWと共同開発したプラットフォームによるもので、VWのトゥアレグとは兄弟車の位置づけになります。
足まわりや駆動系は共通のパーツ構成ですが、その味付けはポルシェらしく仕上がっています。
ここではポルシェ・カイエンのトラブルについて、実際に巷で流れる情報を参考にして掘り下げてみたいと思います。
結論、ポルシェカイエンは壊れにくい
ポルシェ・カイエンは、車体もエンジンもドイツならではの質実剛健な作りで、基本的には壊れにくいです。ただし、制御系や電装パーツ、内装部品などのマイナートラブルは避けられないこともあります。
これは国産車にも当てはまることですが、修理費用が高額になる場合が多く、そのことも考慮に入れる必要があります。
特にエンジン部品は高額なうえに工賃もかさむので、オーバーホールのタイミングでは買い換えも検討に入れるべきかということが悩みどころです。
カイエンは50年乗れる!?
ポルシェ・カイエンが何年乗れるかという問題に関して言えば、10年20年は余裕で乗り続けることができるでしょう。
シャーシについては、重量級の4輪駆動車で、ハイパワーエンジン搭載の動力性能が高い車の設計なので、相当のマージンを持たせているはずです。
足まわりもそれに見合う強度が確保できる素材と構造で作られているでしょう。それはブレーキも同様で、パッドやディスクなどの消耗部品を定期的に交換していれば永く保つでしょう。
そうなると主要部分のなかで耐用年数が問題になるのは、先述のエンジンとなります。
ポルシェカイエンは何キロ走れるのか?
エンジンのオーバーホール時期として一般に言われている基準は、30万から50万㎞と言われています。これは年数で言うと、1年で1万㎞走るケースの場合で30年〜50年となります。
走り方の違いを考慮に入れて、だいたい20万㎞くらいがマージンを残した時期と言えます。ただし、カイエンのV型8気筒エンジンはアルミ製シリンダーブロックのためボーリングができません。
シリンダー壁のメッキ層が残っているうちにピストン周りの交換で対応すれば延命できますが、それを行ったとしても、オーバーホールまでの期間の倍は保たないでしょう。そうなるとエンジンの載せ替えとなってしまいます。
ポルシェカイエンでよく起きる故障・トラブルは?
続いては、ポルシェ・カイエンでよく聞く故障やトラブルの例を探ってみましょう。初代のモデルになると製造から20年以上が経過していることになるので、あちこちに劣化の兆候が現れているはずです。
カイエンのオーナーによる報告例などを元に、カイエンの故障が起こりやすいポイントを見ていきましょう。
クーラントパイプからの水漏れ発生
カイエンのオーナーや、整備業者からの声で最も多く聞くのがこの冷却液の漏れのトラブルです。症例は何通りかあり、どこかが特に弱いということではないようですが、実例を紹介していきましょう。
まずはエンジンのブロックと冷却水のホースをつなぐインレット&アウトレットパイプからの水漏れ。これは装着部分の気密を保つOリングの劣化によるもので、交換で対応できます。
続いてはシリンダーヘッドのバンク間を走るウォーターパイプの劣化による漏れ。これは初期が樹脂製のため、熱や風化による劣化でヒビが入り、漏れに繋がるというものです。
後期ではアルミ製の対策部品に置き換わっているので、交換で対応可能です。あとは一般的なホースの劣化によるひび割れなども報告例が見られました。
イグニッションコイルの劣化による失火
エンジンチェックランプが点灯し、エンジンの不自然な振動が出始めたという報告例も複数見られました。
これはエンジン本体の機械的なトラブルではないものの、放置するとエンジン本体にダメージが及ぶので軽視できません。原因はイグニッションコイルの内部劣化です。
この原因によって作動が維持できなくなったことで失火に繋がったようです。イグニッションコイルの交換で対応できますが、部品単価が高く、個数も多いので修理代はかさみます。
ヘッドライトの接触不良による不点灯
ポルシェ・カイエンで少数ですが複数の報告例が見られたケースがあります。ヘッドライトの裏側の配線が振動や接触で断線して、ライトの不点灯が起こっているようです。
これは対策ハーネスへの交換で対応できます。ヘッドライトの不点灯自体は大きなトラブルには入らないが、万が一のことを考えると、ショートして発火というケースもあり得るので、不点灯を発見したら点灯は控えて修理に持ち込むべきです。
天井の垂れ
キャビンと荷室が繋がっていてルーフの面積が広いワゴンやSUVでは起きやすいトラブルと言えます。
面積が広いということは、天井の内張の重量も大きくなり、固定する接着剤や構造材が緩みやすく、その結果、垂れ下がってくるというトラブルも多くなります。
新品への交換で対応することになりますが、装着には経験が要る部分なので、ディーラーや専門技術のある業者に依頼することとなり、工賃は高くなります。
リアゲートダンパーの抜け
このトラブルはリヤハッチがある車種では持病のようなものと言えます。カイエンもこの例には漏れず、パーツを取り寄せてDIYで交換したという報告例がいくつか見られました。
ボディサイズが大きい車なのでハッチも大きく重量があり、荷物の積み降ろし中にゲートに挟まれたりすると怪我の心配もあります。
少し上がり方が遅いなと感じたら、できるだけすぐに交換することが望ましいです。
ポルシェカイエンでよく起きる故障・トラブルをなるべく軽減するためにできる対処法は?
上記のいくつかのトラブルに共通する防止方法は、エンジンの発熱をできるだけ抑えるような使い方をすることです。オーバーヒートまでいってしまうとエンジンの寿命を著しく短くしてしまうので、それは避ける必要があります。
そこまでいかなくとも、発熱を抑える使い方をすれば、エンジン周辺のパーツや補機類の劣化を少なくすることができます。
具体的には、夏場での酷使を避けることです。例えば渋滞でエアコンを全開にして、ヘッドライトを点け、オーディオを大音量で鳴らすというのはNGです。
エアコンの設定温度を少しでも下げ、ポジションランプに切り替え、音量を下げれば、エンジンへの負担は少なくできます。
あとは炎天下に青空駐車をできるだけしないことです。エンジンルーム、室内ともに60度以上になることもあるので、樹脂や接着剤が劣化しやすくなってしまいます。
ポルシェカイエンの修理費用の目安
ポルシェ・カイエンの修理費は、ある程度の出費を覚悟しておくべきです。
大きな修理費の代表はエンジンです。ピストン交換レベルのオーバーホールになると150〜200万円掛かると言われています。そのため新品エンジンへの載せ替えを勧める業者も少なくないようです。
新品エンジンへの載せ替え費用は約300万円とのことです。イグニッションコイルの交換は、8気筒であれば部品代だけで1万円×8本=8万円。それに工賃を加えてだいたい10万円というところでしょう。
天井の内張り交換は、純正の新品を使うと20万円弱かかりますが、専門業者の補修施工なら半分で済むケースもあるようです。ざっくり言うと、部品の価格は国産車のそれの約1.5倍〜2倍程度かかるので、部位によっては天井の内張の例のように、補修で費用を抑える方法もあります。
まとめ
初代から数えると、もう20年以上が経過しているポルシェ・カイエン。人気自体は発売以来ずっと高いところを維持しているので、中古車市場でも取引が多い車種だと思われます。
そのため中古車の多くは複数のオーナーを経由している可能性が高く、状態のバラつきも大きいでしょう。
ドイツの質実剛健な作りと、ポルシェのもの作りのポリシーなどから、メカニズム的には長く乗れるポテンシャルを備えているはずです。しかし、電子制御の需要の拡大により、電気系統のトラブルが目立つようになっています。
10万㎞走行くらいのタイミングで各部のリフレッシュを行っている個体ならその後も10年以上は乗れるでしょう。逆に乱暴に乗られて軽いオーバーヒートを経験しているような個体は要注意です。
その見極めは経験者でも難しいので、年式の古いモデルを永く乗ろうと思うなら、素性の確かな個体を選ぶのが得策です。