自動車にとっての心臓はエンジンであり、そのエンジンにとって血液ともいえるのは、エンジンオイルです。エンジンオイルの交換は気にかけているけれど、エレメントを交換してもその効果を体感する機会が無いため、エレメントについてはそれほど気にしない方が多いと思います。
しかし、体感することは無くともエンジンを守るために重要な役割を担っている大事な存在です。今回はオイルエレメントの役割について改めて確認をします。
オイルエレメント(フィルター)とは?

エンジンにはオイルエレメント、オイルフィルターと呼ばれる部品が装着されています。どんな役割を果たしている部品なのか意外と知られていないその役割や種類を紹介します。
オイルエレメントの役割
オイルエレメントの主な役割は「ろ過」を通じてエンジンオイルの性能を長持ちさせることです。エンジンオイルはエンジン内部の金属部品の潤滑という役割だけでなく、エンジン内部で発生する不純物の回収を行う洗浄機能も兼ねています。
その不純物を含んだエンジンオイルをオイルエレメントが「ろ過」して不純物を取り除くことで、エンジンオイルの性能を長く維持させることができます。
オイルエレメントの種類
オイルエレメントはエンジンオイルをろ過するための「ろ紙」を指します。よく目にするオイルフィルターはカートリッジのことを指しており、中にオイルエレメントを内蔵しています。
国産車の多くは、金属タイプのオイルフィルターを使用しており、エンジンの側面などエンジン外部に取り付けられています。オイルフィルター内部にネジが切ってあり、オイルフィルター自体を締めるようにして装着されています。
エレメントが内蔵されているため古いオイルフィルターを外し、新しいオイルフィルターを装着することで交換が容易に可能となっています。このオイルフィルターごと交換するタイプをスピンオン型といいます。
外国車の場合、オイルエレメントのみ交換するリプレイス型が主流です。スピンオン型と異なり、エレメントが収納されているカートリッジ型のケースやエンジンに蓋が付いており、その内部にエレメントが装着されています。欧州ブランドの多くでエレメントのみを交換する形にしているのは、環境に配慮しての側面が大きいです。
オイルエレメントの重要な機能

小さなオイルエレメントが担う重要な機能と、エレメントタイプ毎の仕組みについて確認していきます。
エンジンオイルのろ過機能
前項で触れたように、エンジンオイルにはエンジン内部を洗浄する効果も持ち合わせています。燃焼時に発生したススやエンジン内部の部品が摩耗して発生した金属粉がエンジン内部には浮遊しています。
エンジンオイルはエンジン内部を循環しながら発生した不純物の回収を行います。エンジンオイルがエレメントを通過する際にその不純物をエレメントがろ過、回収することで、不純物が取り除かれたエンジンオイルは再びエンジン内部を循環します。
様々なろ過方式
エレメントにはエンジンオイルのろ過という機能があることを理解いただけたかと思います。そのろ過方式にも代表的な3つのタイプが存在します。
1つ目は、「フルフロータイプ」です。ガソリンエンジン車で最も多く採用されている一般的なタイプです。オイルポンプから送られてくるオイル全量のろ過を行います。エンジンへの油圧を確保しつつ、エンジンへ悪影響のある不純物を効率よくろ過して回収するための「ろ材」設定がされています。
2つ目は、「フルフロータイプ+バイパスタイプ」です。主にディーゼルエンジン車に採用がされています。フルフロータイプに加えてバイパスタイプのフィルターが用意されており、オイルポンプから送られてくるエンジンオイルはフルフロータイプとバイパスタイプ2つのフィルターに流れます。
フルフロータイプを通過したエンジンオイルは、エンジン本体へ供給されます。バイパスタイプを通過したエンジンオイルは、オイルパンへ戻っていきます。バイパスタイプはフルフロータイプでキャッチすることができないカーボン質の汚れや微粒子の除去を目的としています。
そのため、ろ材の目は非常に細かくなっており、バイパスタイプは少ない油量をゆっくりと時間をかけてろ過していきます。
3つ目は、「コンビネーションタイプ」です。これは1つのフィルター内にフルフロータイプとバイパスタイプの2種類のエレメントがセットされています。役割としては2つ目の「フルフロータイプ+バイパスタイプ」同様ですが、スペースは1つ分で済むため省スペースであり交換作業も効率的に行えます。
フィルターの構造としては、入口は1つですが出口は各エレメント毎に設けられており2つ存在します。
エンジン内部をクリーンにキープ
エンジンオイルが不純物をエレメントまで運び、エレメントが不純物の回収を行うサイクルが機能することでエンジン内部はクリーンな状態がキープできます。しかし、エレメントの回収能力を超えた場合、回収しきれなかった不純物が再びエンジン内部を循環してしまう問題点が発生します。
オイルエレメントを交換しないと?

オイルエレメントの交換を行わずに継続使用を続けた場合、発生するトラブルについて例を挙げていきます。
エレメントの詰まり
最も発生リスクが高いのは、オイルエレメント自体の目詰まりです。エレメントはろ過を行う「ろ紙」で構成されているため、オイルに含まれる不純物を回収することで、初期段階としてはエレメントの目詰まりが発生します。
その後、何層にもわたる堆積が発生する悪循環が起こります。エレメントでろ過することができなくなったエンジンオイルは、回収できなかった不純物と共にエンジン内部を循環することに繋がります。
エンジン内部に汚れの堆積
エンジンオイルと共にエンジン内部を循環した不純物は、やがてオイルが通過するオイルラインやオイルの流量が少ない箇所に堆積していきます。
この不純物というのは、金属の摩耗で発生した金属粉だけでなくスラッジと呼ばれる、燃焼時にオイルと混ざった燃料やオイルの燃えカスです。これらがオイルに含まれた状態で使用し続けるとオイル自体の劣化も促進させてしまうため、オイルの洗浄作用も機能しなくなり、よりエンジン内部を汚す結果を引き起こします。
また、堆積した不純物はエンジン内部に焼き付いた形として残り、新たなオイルに交換した程度では取り除くことができない残留物へと変化してしまいます。その繰り返しによって最終的にはエンジンの不調を引き起こす原因となってしまいます。
オイルエレメントを交換するには?

オイルエレメントを交換することによって、エンジン内部をクリーンに保つことができることをご理解いただけたと思います。交換をするにあたって、タイミングや方法について紹介します。
交換タイミング
オイルエレメントの交換タイミングは、オイル交換と同時に行うのがベストです。欧州ブランドがアナウンスしているオイルの交換タイミングは、多くの車種で1万キロ毎になっており、併せてオイルエレメントの交換も推奨しています。ただし、これは欧州ブランドの当地で使用しているケースを想定していること、環境負荷を考慮してオイル交換の頻度を下げる目論見の上での交換サイクルといえます。
欧州では、日常の移動で日本の高速道路と同等の速度レンジでの走行が多く、一度の走行距離も多いためエンジンへの負担は日本で使用されている環境よりも低く、併せて適度な負荷で使用されたエンジンオイルは劣化も低い傾向です。
しかし、日本での走行シーンの多くは市街地メインであり、日常的に使用するケースの場合、オイルの温度が適温になる前にエンジンを停止する場面も多いといえます。俗に言う「シビアコンディション」という環境下に置かれています。
欧州ブランドでは、高速走行時をメインに想定した設計をしているため、日本の市街地メインでの使用が多い場合、ピストンとシリンダーの隙間から漏れ出るガソリンとオイルミストの混合ガスである、ブローバイガスが多く発生する傾向です。このブローバイガスもスラッジの要因の1つです。
その点を踏まえ、オイル交換のタイミングを早めてあげることが望ましいです。仮に5千キロで交換の場合、オイルエレメントは遅くともエンジンオイル交換の2回に1回には交換することが良いでしょう。
もちろん、エンジンオイルの交換頻度を早めに設定しオイルエレメントも都度交換することに越したことはないです。交換の頻度を高めることで、確認することが難しいエンジン内部をクリーンに保ち、性能を長く保つことにも繋がります。
ショップ選び
エンジンオイルの交換は、今や多くのショップで行うことが可能です。しかし、外国車でオイルエレメント交換を伴う、エンジンオイル交換となると対応できないショップが急激に増えます。
その理由としては、オイルエレメント自体やエレメントのカートリッジに使用するパッキンの在庫を持ち合わせていないケースの他に、近年の欧州ブランドではオイル量の確認が従来のレベルゲージで行えないエンジンを搭載したモデルも多いことが要因といえます。
また、レベルゲージを使用しないためにエンジンオイルの交換後にリセット作業が必要になっています。これらの作業に対応可能なのは、各ブランドの正規ディーラー、各車種やブランドに強い専門店、一部の大型カー用品店です。
正規ディーラーや専門店は、以前からの付き合いがあれば特に気にすることはありませんが、初めて訪れるショップでは敷居が高いと感じるでしょう。また、事前に使用するオイルの銘柄と価格、工賃の確認もしづらい雰囲気といえます。
大型カー用品店は、ディーラーや専門店と比較して気軽に訪れることができる存在です。しかし、オイル交換のようなメンテナンスがメインとなっているため、その他のメンテナンスを同時にお願いすることは難しいといえます。
どこに依頼すればよいのか迷ってしまった場合は、是非トップランクへご相談ください。輸入車・国産車を問わず対応することが可能です。また、各種整備やカスタマイズに対応可能な自社整備工場を有しているため、オイルとエレメント交換の入庫に合わせての作業についても対応が可能です。
気になった方は、まずはホームページをご覧いただきお問い合わせいただければと思います。



