ボクスターの派生モデルであると同時に兄弟車であり、時にその時代の911を脅かすほどの実力を身につけたケイマン。ミッドシップレイアウトを採用した純スポーツカーとして、911よりもケイマンを支持するユーザーも確実に増えています。
先代モデルである981型と、現行モデルである718(982型)との違いは?変更されたポイントとは?今回はこのあたりを考察してみましょう。
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ポルシェ ケイマンの歴史
2005年に初代ケイマンが登場
2004年にデビューした2代目ボクスター(987型)のフルモデルチェンジから1年後、2005年にボクスターから派生したクーペモデルとしてデビューしたのが初代ケイマン(987型)です。
ボクスターの派生モデルといっても、単にハードトップモデルを架装したようなデザインではなく、フロントマスクはボクスターとは差別化され、抑揚のあるリアフェンダー、そしてリアゲートを装備したハッチバックスタイルをまとっていることが特徴のひとつです。
ケイマン(981型)と718(982型)モデルの登場
ケイマン(981型)の登場
2012年3月、3代目(981型)へとフルモデルチェンジしたボクスターがデビュー。それから8ヶ月後、ケイマンも2代目となるケイマン(981型)へと進化しました。
ボディは先代モデルより低くなっており、全長も長くなっています。それに加えて、長くなったホイールベース、よりワイドになったトレッド、大径化されたホイールの相乗効果により、ミッドシップレイアウトを採用したケイマンの走行性能を一段と向上させています。
911、ボクスターに続くケイマンは、ポルシェ第3のスポーツカーモデルシリーズであり、軽量な構造のボディが特徴となります。
モデルや装備内容によって違いはあるものの、ケイマン(981型)は先代モデルとの比較で最大30kgの軽量化を実現。エンジンと走行パフォーマンスが向上したにもかかわらず、走行距離100kmあたりの燃料消費量は最大で15%も低く抑えられています。
718(982型)
「718」という名称は、名の知られた自動車レースで多くの栄光をポルシェにもたらした、1957年に活躍したスポーツカーに由来しています。
718(982型)ケイマンにはターボチャージャー付き4気筒水平対向エンジンが搭載されます。このエンジンのルーツはレーシングカーである919ハイブリッドLMP1レースカーであり、高効率の2リッター4気筒ターボエンジンが搭載されています。
ポルシェは、ル・マン24時間レースにおいて919ハイブリッドLMP1で参戦し、1-2フィニッシュを達成しただけでなく、世界耐久選手権(WEC)のマニュファクチュアラータイトルとドライバータイトルも獲得しました。
この勝利によって、919ハイブリッドはポルシェの未来のスポーツカーエンジンのパフォーマンスの可能性を示したのです。
ケイマン(981型)と718(982型)モデルのデザインの違い
外観デザインの変更点
ケイマン(981型)
ケイマン(981型)のフォルムは、ポルシェのスポーツクーペであることは一目瞭然といえます。ケイマン(981型)は、先代モデルと比較して延長されたホイールベース、より短くなったオーバーハング、そして18インチおよび19インチホイールが与えられた外観が特徴です。
またスタイリングについては、ボディをあらゆる角度から見ても分かる精緻なラインと、まるでかみそりのように鋭くシェイプされたエッジが独自の個性を演出しています。
そして、低く構えた長いシルエット、さらには前方に伸びたフロントウインドウ、そして後方に流れるルーフラインをより強調しています。
特に注目すべきポイントはドアの形状であり、空気をリアサイドパネルのエアインテークへ導きそのままエンジンに送り込みます。これはミッドシップエンジンのコンセプトを採用していることがもっとも明確に表れているといえる部分です。
ケイマン(981型)のフロントエンドの特徴のひとつとして挙げられるのが、ラジエーター用の左右の大型エアインテークです。また、低い位置に取り付けられたアルミ製の大型リアリッドとリアセクションもケイマン(981型)のデザインの特徴です。
その他、リアのトランクリッドに直接固定されたリアスポイラーは、ボクスターのものよりも高く、より鋭角に展開するデザインとなっています。
718(982型)
718(982型)ケイマンのデザインは、まさにケイマン(981型)のリファイン版といえるでしょう。フロントおよびサイドのエアインテーク、そして低いサイドプロフィールがダイナミックさを強調しています。ケイマン(981型)よりもシャープな形状となったノーズは、フロントエンドに迫力のある印象を与えます。
さらに、パーキングライトとインジケーターライトを含めたサイドエアインテーク上の細長いフロントライトが、より迫力のあるフォルムを印象づけます。
また、クーリングエアインテークとバイキセノンヘッドライトが、718(982型)ケイマンのフロントエンドのデザインのキーポイントでもあります。
サイドビューはフェンダーとサイドシルが特徴的です。リアまわりのデザインは、“Porsche”ロゴを冠したハイグロスブラックのテールライト間のアクセントストリップによって、さらにワイドさを強調します。
テールライトも3Dテクノロジーと4灯のスポットライトによるLEDブレーキライトが洗練された印象を与えます。
内装の特徴
ケイマン(981型)
ケイマン(981型)の内装は、ステアリング、ドアパネル。センターコンソールのスイッチ類のレイアウトおよびデザインなど。
同世代の911(991型)のテイストを色濃く残すデザイン、そしてレイアウトとなっています。それと同時に、メーターは911(991型)が5連であるのに対して、ケイマン(981型)は3連。
オプションのスポーツクロノパッケージも、ダッシュボード上に贅沢にレイアウトされる911に対して、ケイマンはダッシュボード前面に埋め込まれるなど、911(991型)が上位であり、その下に位置することを明確に示しています。
718ケイマン(982型)
718ケイマン(982型)ではインテリアもリファインされました。エアベントを含むダッシュパネル上部が新しくなり、標準装備されるポルシェ・コミュニケーション・マネージメントシステム(PCM)とともに、918スパイダーから流用された新しいスポーツステアリングと広範な接続オプションが追加されています。
オーディオインターフェイス、および150Wのサウンドパッケージプラスのすべてが標準装備に含まれます。
PCMの拡張オプションも用意されており、その中にはApple CarPlayなどスマートフォン専用の拡張機能も含まれています。
ケイマン(981型)と718(982型)のパフォーマンスの違い
ケイマン(981型)と718(982型)のそれぞれのパフォーマンスの違いを見るために、まずは両者のスペックについて紹介します。
ケイマン(981型)と718(982型)のエンジンスペックの比較(エンジンタイプ、馬力、トルク)
ケイマン(981型)
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:2687cc
- エンジン最高出力/最大トルク:275ps/290N・m
- トランスミッション:6速MT/7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4380×1801×1294mm
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:3436cc
- エンジン最高出力/最大トルク:325ps/370N・m
- トランスミッション:6速MT/7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4380×1801×1295mm
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:3436cc
- エンジン最高出力/最大トルク:340ps/380N・m
- トランスミッション:6速MT/7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4405×1800×1285mm
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:3436cc
- エンジン最高出力/最大トルク:385ps/420N・m
- トランスミッション:6速MT
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4438×1817×1266mm
718ケイマン(982型)
- エンジン:水平対向4気筒ターボ
- 排気量:1988cc
- エンジン最高出力/最大トルク:300ps/380N・m
- トランスミッション:6速MT/7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4379×1801×1295mm
- エンジン:水平対向4気筒ターボ
- 排気量:2497cc
- エンジン最高出力/最大トルク:350ps/420N・m
- トランスミッション:6速MT/7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4379×1801×1295mm
- エンジン:水平対向4気筒ターボ
- 排気量:2497cc
- エンジン最高出力/最大トルク:365ps/420N・m(MTは430N・m)
- トランスミッション:6速MT/7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4393×1801×1286mm
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:3995cc
- エンジン最高出力/最大トルク:400ps/420N・m
- トランスミッション:6速MT
- ステアリング:右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4405×1800×1285mm
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:3995cc
- エンジン最高出力/最大トルク:420ps/420N・m
- トランスミッション:6速MT
- ステアリング:右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4456×1801×1269mm
- エンジン:水平対向4気筒ターボ
- 排気量:1988cc
- エンジン最高出力/最大トルク:300ps/380N・m
- トランスミッション:7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4379×1801×1276mm
- エンジン:水平対向6気筒
- 排気量:3995cc
- エンジン最高出力/最大トルク:500ps/450N・m
- トランスミッション:7速PDK
- ステアリング:左/右
- ボディサイズ(全長×全幅×全高):4456×1822×1267mm
以下ではそれぞれの違いについて詳しく解説します。
加速性能の違い
ケイマン(981型)
全車水平対向6気筒エンジンを搭載するケイマン(981型)。911よりも甲高い音色を発し、社外マフラーに交換するとポルシェらしからぬエキゾーストサウンドを発します。
装備内容による違いはあるものの、ケイマンの0-100km/h加速のタイムは5.4秒、最高速度は266km/hに達します。また、ケイマンSの0-100km加速のタイムは4.7秒、最高速度は283km/hに達します。
さらに、ケイマンGTSの0-100km/h加速のタイムは4.6秒(PDK)、最高速は285km/hをマーク(6MT)します。そして、ケイマンGT4の0-100km/h加速タイムは4.4秒、最高速度は295km/hに達します。
ポルシェらしく、グレードによって明確に性能の差別化がなされていることが分かります。
718(982型)
いっぽうで、718(982型)ケイマンによる0-100km/h加速タイムは4.7秒、最高速度は275km/hに達します。
また718(982型)ケイマンSの0-100km/h加速タイムは4.2秒、最高速度は285km/hに達します(いずれもオプションのスポーツクロノパッケージを装着したPDK仕様)。
究極のケイマンともいえる718ケイマンGT4 RSの0-100km/h加速のタイムはわずか3.4秒(GT4のPDK仕様車:3.9秒)、最高速度は7速で315km/h(718ケイマンGT4で304km/h)に達します。
水平対向4気筒ターボエンジンを搭載するモデルは、ターボカーらしく981型よりも低音の音色に特徴があります。しかし、モデルレンジの途中で追加された水平対向6気筒エンジンは、エキゾーストサウンドを演出する最近のポルシェらしく、抜けの良い高回転サウンドが魅力です。
燃費性能の変化
ケイマン(981型)の燃費(カタログ値)
モデル | トランスミッション | 燃費 (km/L) |
---|---|---|
ケイマン | 6MT | 11.6 |
PDK | 12.0 | |
ケイマンS | 6MT | 10.0 |
PDK | 11.4 | |
ケイマンGTS | 6MT | 10.7 |
PDK | 10.9 | |
ケイマンGT4 | 6MT | 8.4km/L |
実燃費はそれぞれ1〜4km/Lマイナスといったところでしょうか。
718ケイマン(982型)の燃費(カタログ値)
モデル | トランスミッション | 燃費 (km/L) |
---|---|---|
718ケイマン | 6MT | 14.1 |
PDK | 14.1 | |
718ケイマンS | 6MT | 12.3 |
PDK | 13.3 | |
718ケイマンGTS | 6MT | 11.4 |
PDK | 11.4 |
こちらも実燃費はそれぞれ1〜4km/Lマイナスといったところでしょうか。981型よりもパワーだけでなく、燃費も向上していることが分かります。
新車、中古車のそれぞれの価格
新車と中古車のそれぞれの価格についても見ていきましょう。
ケイマン(981型)(2012年12月~2016年4月)
モデル | トランスミッション | 新車時の価格 |
---|---|---|
ケイマン | 6MT | 6,120,000円 |
PDK | 6,590,000円 | |
ケイマンS | 6MT | 7,730,000円 |
PDK | 8,200,000円 | |
ケイマンGTS | 6MT | 9,150,000円 |
PDK | 9,790,000円 | |
ケイマンGT4 | 6MT | 10,640,000円 |
- 平均価格:607万円
- 価格帯:339.5万円~1270万円
718(982型)ケイマン(2016年4月~)
モデル | トランスミッション | 価格 |
---|---|---|
718ケイマン | 6MT | 8,400,000円 |
PDK | 8,832,000円 | |
718ケイマン スタイルエディション | 6MT | 9,520,000円 |
PDK | 9,944,000円 | |
718ケイマンT | 6MT | 8,420,000円 |
PDK | 8,972,000円 | |
718ケイマンS | 6MT | 10,390,000円 |
PDK | 10,822,000円 | |
718ケイマンGTS 4.0 | 6MT | 12,240,000円 |
PDK | 12,736,000円 | |
718ケイマンGT4 | 6MT | 12,370,000円 |
718ケイマンGT4 RS | PDK | 20,240,000円 |
- 平均価格:1071.8万円
- 価格帯:444.5万円~3420万円
リセールバリューの違い
ケイマン(981型)
水平対向6気筒エンジンを搭載した最後のモデルとして、生産終了してから8年近い年月を経ても高いリセールバリューを誇ります。
なかでも左ハンドル+6MTモデルは希少価値がありながらも、市場の需要が高い仕様となるため、多少過走行気味でも高値で売却することが期待できます。
また、モデルレンジの追加モデルであるGTSや、限定モデルのGT4は常に品薄状態であり、こちらもリセールバリューが大いに期待できるでしょう。
718(982型)
718型は現行モデルでありながらモデル末期のタイミング(2024年4月時点)であり、多くのグレードが新車オーダーを打ち切っています。
水平対向6気筒エンジンよりも、高年式のケイマンに乗りたいという需要を担い、また右ハンドル仕様が少しずつ一般化しつつある時期のモデルでもあります。
よほどの過走行または修復歴ありといった要素がなければ、718(982型)はリセールバリューが多いに期待できます。
ケイマン(981型)と718(982型)ケイマン、どちらのモデルを選ぶべきか?
では、ケイマン(981型)と718(982型)のどちらを選ぶべきなのでしょうか。予算にも余裕があり、トラブルのリスクを極力回避したいのであれば718(982型)をおすすめします。
先述したとおり、ケイマン(981型)型は最終モデルでも8年落ちです。4回目、あるいは5回目の車検を迎える個体も増えてきています。
輸入車には日本の法規とは別に、走行距離や年数などに応じてメーカーが独自の基準によって定めた定期交換部品があります。所有するうえで年式や走行距離相応のトラブルや交換部品などの出費が起こりうることを念頭に置く必要があります。
各モデルのターゲットユーザーは?
718(982型)ケイマンも生産終了となり、次期モデルはフルEV化が噂されています。純内燃機関を搭載するケイマンを思う存分堪能する、またとない機会といえます。では、ケイマン(981型)および718(982型)ケイマンの各モデルのターゲットユーザーを考察してみましょう。
ケイマン(981型):予算には限度がある。水平対向6気筒エンジンをいまのうちに存分に味わっておきたい。
718(982型)ケイマン:予算が潤沢にあり「最新のポルシェは最良のポルシェ」を味わってみたい。
マニアックさを追求したいのであればケイマン(981型)、最後(であると思われる)純内燃機関を搭載したケイマンを味わいたいのであれば718(982型)ケイマンという選択が結論といえるでしょう。
今回の記事を読んでも「どちらか選べない!」という方に向けて、トップランクではオンラインでのご相談も承っておりますので、お気軽にお問合せください。
ご自宅にいながら、スタッフがケイマンの魅力や特徴、価格などについて詳しくご説明いたします。